紀貫之『土佐日記』の原本は?
紀貫之が平安時代に記したとされる日記文学『土佐日記(土左日記)』。
これは、土左に国司として赴任していた紀貫之が、京都の自宅に戻るまでの道中をフィクションやジョークも交えながら日記風に記した本で、「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」という冒頭文は有名です。
さて、この『土佐日記』、制作年は934年頃と言われていますが、紀貫之直筆の原本は残っているのでしょうか。
現在残っているのは、原本ではなく誰かが書き写した写本です。
ただし、『土佐日記』が珍しいのは、写本の写本といった形ではなく、紀貫之自筆の原本からの写本がある、ということ。
原本からの写本としては、藤原定家、藤原為家、松木宗綱、三条西実隆のものがあり、特に重要とされるのが、藤原定家、藤原為家の写本です。
藤原為家版『土佐日記(土左日記)』 – 文化遺産オンライン
原本は、ある時期まで紀貫之自筆のものが残っていたと伝わっています。
鎌倉時代までは京都蓮華王院の宝蔵に納められ、のちに歌人尭孝のもとに、その後、足利義政に献上され足利将軍家の所蔵となったのですが、以降の消息は分かっていません。