めっきりとすっかりの違いとは
めっきりとは
今でもときおり使われる言葉に、「めっきり」という表現があります。
めっきり(と)とは、「状態の変化がはっきり感じられる様」や「物事や数量が十分に大きいこと」を意味します。
たとえば、日常でも、「めっきり老けた」といった使い方がされます。
文章で「めっきり」を使う場合は基本ひらがな表記ですが、昔の小説などを見ると、「滅切り」と漢字で表記されることもあったようです。
ところが、私が如何にか斯うにか取続いて帰らなかったので、両親は独息子を玉なしにしたように歎いて、父の白髪も其時分僅の間に滅切り殖えたと云う。
出典 : 二葉亭四迷『平凡』
ただ現代では「めっきり」を漢字で書いている文章は見かけませんし、辞書でもひらがなで掲載されています。
この言葉は、必ずしも悪い意味というわけではありませんが、例文としては、「めっきり手紙を書かなくなった」「めっきり老け込んだ」「めっきり体が弱ってしまった」など、一つのことが、減少傾向にあったり勢いが衰えている際に使われることが多い印象を受けます。
逆に、「めっきり体が強くなった」「めっきり成績が上がった」といったような、いい意味で使われる例は基本的に見たことがありません。
しかし、辞書を見ても、「めっきり」が、必ずしも「減っていく」ということを意味しているわけでもないようなので、これは時代とともに根付いた傾向なのかもしれません。
実際、古い小説の一文としても、めっきりは、勢いがついた際の表現として使われている場合があります。
もし左様だとすれば、心臓から動脈へ出る血が、少しづゝ、後戻りをする難症だから、根治は覚束ないと宣告されたので、平岡も驚ろいて、出来る丈養生に手を尽した所為か、一年許りするうちに、好い案排に、元気が滅切りよくなつた。
出典 : 夏目漱石『それから』
この夏目漱石の小説の一文なども、「元気がめっきりよくなった」と、勢いがついた様として使用されていますし、他にも、「めっきり暑くなった」という用例も過去には見られます。
めつきり暑うなつた、散歩したが物足らないので、酒を借り魚を料理して、樹明君の来庵を待ちくたぶれて、やうやく飲み合つた。
出典 : 種田山頭火『其中日記』
どうやら、用例を見ていると、昔はめっきりが減少や衰えばかりを指したものではなかったようです。
とは言え、減少や衰えの方向を指す使い方をしている作品が多く見られるので、割合としては、以前から下がっていく方向に使われることが多かったのかもしれません。
また、「めっきり」の類語として、「めきめき」という表現がありますが、「めきめき」に関しては、「めっきり」と違い、度合いの変化を指す場合、「めきめき成長する」などポジティブなイメージのみで使用されます。
めっきりも、めきめきも、板などが壊れたりきしんだりする様や音を表すと同時に、際立った「状態の変化」も意味し、語源は定かではありませんが、もしかしたらこの辺りと関連しているのでしょうか。
すっかりとの違いとは
めっきりと似たような言葉では、「すっかり」という表現もあります
1 残るもののないさま。ことごとく。「金庫の金が―なくなる」「仕事が―かたづく」
2 完全にある状態になっているさま。まったく。「からだはもう―よい」「―春だ」
3 すがすがしいさま。さっぱり。きっぱり。すっぱり。
4 難がなく、見ばえのするさま。すっきり。
すっかりの意味を見ると、めっきりと類似している使い方としては、「1」や「2」が挙げられるでしょう。
ただ、「めっきり」は、変化の度合いが大きい際などに使われるのに対して、「すっかり」は、「残るものがないさま」や「完全にある状態になっているさま」など、よりはっきりした状態になることを指す、といった違いがあるようです。
具体的な例文として、「めっきり老けた」と「すっかり老けた」を比べてみたいと思います。
両者を比較すると、「めっきり」のほうが、「老けていっている最中で、だいぶ老けた」というニュアンスで、「すっかり」の場合、「もう完全に老けて老人になっている」という意味合いになります。
別の例文で言えば、「めっきり仕事がなくなった」と「すっかり仕事がなくなった」で比較すると、違いが分かりやすいかもしれません。
完全にそうなってしまっている状態を強調したい場合には、「すっかり」のほうが、適していると言えるでしょう。
