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短歌

短歌「サラダ記念日」の全文と意味

短歌「サラダ記念日」の全文と意味

〈原文〉

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日(俵万智)

概要

作者の俵万智たわらまちさんは、1962年、大阪府生まれ、福井県育ちで、現代歌人協会賞、紫式部文学賞、若山牧水賞など数々の賞を受賞する、現代日本を代表する歌人の一人です。

早稲田大学第一文学部に入学後、「心の花」を主宰している佐佐木幸綱ゆきつなに師事し短歌の世界に入ります。

大学卒業後、国語教員をしながら発表した作品が話題となり、1987年に第一歌集『サラダ記念日』を出版。この本が、歌集としては異例の280万部の大ベストセラーになります。

歌集のタイトル『サラダ記念日』の由来でもある短歌が、俵万智さんの代表作「「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」です。

サラダ記念日という単語は知っていても、あまり冒頭部分や全文は知らない、という人も少なくないかもしれません。優しい口語体の短歌で、意味もすんなりと入ってきます。

ある日、好きな人のためにつくったサラダを、「この味がいいね」と言ってくれたから、その日をサラダ記念日としよう、という嬉しい気分が伝わってくる短歌です。

嬉しい、という心情を、「嬉しい」という言葉で表現せずに、「サラダ記念日」という独自の単語で表現しています。

もし、この味がいいねと君が言ったからとても嬉しい、ということを、そのまま表現していたら、これほど人気の「歌」にならなかったかもしれません。

思わず、「サラダ記念日」と名付けるほど、気分がウキウキしている様子が、説明も省きながら、体言止めで締められるからこそ、よりはっきりと心に響き、また耳にも残る短歌になっていると言えるでしょう。

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歌集の出版が1987年と、決して最近の作品ではありませんが、SNSの普及以降、より身近な言葉になった「いいね」。

インスタグラムやツイッターなどSNSでは、「いいね」がもらえると、どこか空虚な心が満たされ、ときには「いいね」の数に一喜一憂することもあるのではないでしょうか。

作者の俵万智さんは、こうした現状も踏まえ、この作品に関して次のようにコメントしています。

今は「いいね」の数を競うような風潮があるけれど、これはたった一つの「いいね」で幸せになれるという歌です。

出典 : 俵万智(Twitter)

同歌集に収録されている、「「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ」という短歌もそうですが、「たった一人の肯定」によって温かさが灯る歌と言えるかもしれません。

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ところで、俵万智さん曰く、「「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」という短歌には、実はちょっとした「フィクション」が混じっているとのこと。

実際は、このときの料理というのは「サラダ」ではなく「唐揚げのカレー味」であり、日付も「七月六日」ではなかったようです。

俵さんが、当時付き合っていた彼氏と野球を見に行った際、お弁当に、鶏のから揚げカレー味を作って持っていったら、恋人がすごく気に入ってくれたので、きょうは記念日だ、と思ったことから着想します。

ただ、「唐揚げ」だと、短歌としてはちょっとヘビーなので、「サラダ」にしたそうです。

日付に関しては、サラダ記念日をいつにするか悩み、サラダがおいしい季節は初夏で、かつ“しちがつ”と“サラダ”という音の響きが爽やかなので決めました、と俵さんは解説します。

「7月7日の七夕だと恋人のイベントになってしまう。そうじゃなくて何でもない日が記念日になることに意味があると思いました。」

一世を風靡した「サラダ記念日」の短歌は、こんな自身のエピソードが由来になっていたようです。

また、この『サラダ記念日』という歌集を原作に、1987年にはTBSでテレビドラマも放送されています。