雪やこんこ? こんこん? 歌詞の意味
作者とタイトル
冬になると、子供たちが歌ったり、テレビやスーパーのBGMで流れてくる、「雪やこんこ、霰やこんこ」という歌詞の一節。
この「雪やこんこ、霰やこんこ」という歌詞を目にするだけで、そのメロディと一緒に蘇ってくる人も少なくないでしょう。
この歌の題名は、『雪』と言い、作詞、作曲ともに作者は不詳です。
作者が不詳と言うと、「え、作曲者は滝廉太郎じゃないの?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、作曲が滝廉太郎の歌は、『雪やこんこん』という題名の違う曲です(作詞が東くめ、作曲が滝廉太郎)。
『雪やこんこん』
雪やこんこん、あられやこんこん
もっとふれふれ、とけずにつもれ
つもった雪で、だるまや燈籠
こしらへましょー、お姉様
この歌詞が、滝廉太郎作曲のほうの『雪やこんこん』で、明治34年(1901年)発行の『幼稚園唱歌』に入っています。
一方の「雪やこんこ」の『雪』とは、明治44年(1911年)に、文部省唱歌として『尋常小学唱歌』第二学年用に掲載された歌です。
この歌は、二番で、「犬は喜び、庭駆けまわり、猫はこたつで丸くなる」という歌詞が続きます。
『講談社の絵本 童謡画集』(4) 絵 : 蕗谷虹児
タイトルは、漢字で『雪』の場合もあれば、ひらがなで『ゆき』という場合もあります。
曲の軽快なリズムのためか、雪のイメージか、歌詞の冒頭を、「ゆきやこんこん、あられやこんこん」と覚えている人もいるのではないでしょうか。
また、雪がこんこんと降る、という風に、雪の擬音語として理解している人もいるかもしれません。
しかし、『雪』の歌詞の冒頭は「こんこん」というのは間違いで、正しくは「こんこ」です。
ただ、この辺りが複雑なのですが、実際、「(雪や雨が)こんこんと降る」という言葉もあり、意味は、「しきりに降り出す様」を指します。
加えて、先ほどの滝廉太郎作曲の『雪やこんこん』もあるので、ごっちゃになっている、という事情もあるかもしれません。
ただ、あくまで『雪』の歌詞に出てくるのは、「こんこん」ではなく「こんこ」が正解です。
昭和33年発行の音楽之友社『しょうがくせいのおんがく 2』にも、「こんこの ところは こんこんに ならないように きを つけて うたいましょう。」と注意書きがあります(参照 : 池田小百合 なっとく童謡・唱歌)。
当時から間違って覚える子どもも少なくなかったのでしょう。
意味・由来
それでは、「雪やこんこ」というときの「こんこ」の意味や由来とは、一体どういったものなのでしょうか。
実は、「こんこ」の正確な意味や由来というのはわかっていません。
ただ、一つの有力な説として、「来う来う」というのが語源である、と国文学者の池田弥三郎は語っています。
この「来う」とは、「来い」を意味し、「雪やこんこ(雪よ、来い来い)」と、雪を歓迎している様子を表現していると考えられています。
雪よ、来い来い、霰よ、来い来い、という歓迎の歌なのでしょう。
童謡で、雪に「こんこ」や「こんこん」が使われる、というのは、日本各地で古くから歌い継がれる童歌に由来し、どちらも雪を歓迎する言葉だったようです。
以下は、『雪』の歌詞全文となります。
『雪』
雪やこんこ 霰やこんこ。
降っては降っては ずんずん積もる。
山も野原も 綿帽子かぶり、
枯木残らず 花が咲く。
雪やこんこ 霰やこんこ。
降っても降っても まだ降りやまぬ。
犬は喜び 庭駆けまわり、
猫はこたつで丸くなる。
雪がどんどん積もり、山も野原も綿帽子。「枯木残らず、花が咲く」とは、枝木にかぶった雪を花に見立てたのでしょう。
そして、二番に、有名な、「犬は喜び庭駆けまわり、猫はこたつで丸くなる」が続きます(参考 : 雪が降ると「犬は喜んで庭をかけまわる」って本当?心温まる冬の愛犬エピソード)。
一番と二番を間違えたり、一番の冒頭と、二番の犬や猫の部分が入り混じって覚えていた、という人も多いかもしれません。
以上、「雪やこんこ」で始まる『雪』の歌詞の意味でした。