童謡『鳩』歌詞の意味─「鳩ぽっぽ」は山鳩の鳴き声 全文と解説
ぽっぽっぽ
はとぽっぽ
豆がほしいか
そらやるぞ
みんなで仲良く
食べに来い
ぽっぽっぽ
はとぽっぽ
豆はうまいか
食べたなら
一度にそろって飛んで行け
概要と解説
ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ──この冒頭だけでも、親しみやすいメロディーが自然と浮かんでくる人も多いのではないでしょうか。
この歌のタイトルは『鳩』と言い、『桃太郎』や『かたつむり』などと同じく、1911年に発行された文部省唱歌の一つです。作詞者・作曲者はいずれも不明とされています。
一年生向けの唱歌ということもあり、歌詞はシンプルで覚えやすく、鳩に豆をあげる情景が、優しい言葉で描かれています。
「ぽっぽっぽ」という鳴き声
冒頭の「ぽっぽっぽ」は、鳩の鳴き声を表した擬音語です。ただし、これはすべての鳩の鳴き声ではなく、山鳩(キジバト)の鳴き声とされています。
公園などでよく見かける鳩(ドバト)の鳴き声ではなく、「ポッポッポー」という独特の鳴き声をする山鳩。この山鳩の鳴き声が、歌詞の「ぽっぽっぽ」の由来と考えられます。
一番と二番の構造
一番では、鳩に向かって「豆がほしいか、ほらやるぞ、みんなで食べにおいで」と呼びかけます。豆をエサとして差し出しながら、鳩を招く場面です。
二番では、豆を食べている鳩に「おいしいか、食べたなら一度にそろって飛んで行け」と呼びかけます。
一番で豆をあげて招いた鳩、二番ではその豆を食べている鳩に、食べたらまた飛んでいけ、と声をかけるという自然な流れになっています。
シンプルな歌詞のなかに、鳩と人とのやりとりが丁寧に描かれています。
もとの歌詞との違い
現在歌われている『鳩』の歌詞は、途中で一度変わった経緯があります。
1941年の国民学校用教科書『ウタノホン』で、曲名が『鳩』から『ハトポッポ』に改められた際、歌詞が以下のように改変されることになります。
一番の末尾:「みんなで一緒に食べに来い」
二番の末尾:「みんなでなかよく遊ぼうよ」
特に二番の末尾が「一度にそろって飛んで行け」から「みんなでなかよく遊ぼうよ」に変わったのは大きな変化と言えるでしょう。
東くめ・滝廉太郎の『鳩ぽっぽ』との関係
ちなみに、この『鳩』と似たような題名の歌として、日本で初めて口語の童謡を作詞した、東くめ作の『鳩ぽっぽ』があります。
東くめは、明治1877年に生まれ、1969年に91歳で亡くなる童謡作詞家です。
教育学者だった夫の提案で、「子供の言葉による、子供が喜ぶ童謡」の作詞を始め、後輩で作曲家の滝廉太郎と組み、作品を残しています。
子供たちが歌いやすいような童謡を作った東くめの作品の一つとして、『鳩ぽっぽ』もあり、滝廉太郎作曲で、1901年刊行の『幼稚園唱歌』に収録されます。
しかし、『鳩』というと、あの「ぽっぽっぽ」が有名で、この東くめ作詞の『鳩ぽっぽ』は、現在ではほとんど知られていません。
実は、この『鳩ぽっぽ』発表から10年後、文部省唱歌が編纂され、最初に触れた『鳩(ぽっぽっぽ、はとぽっぽ)』が、作者不明の歌として掲載されます。
この『鳩ぽっぽ』と、その後の『鳩』とは、一体どういった関係があるのでしょうか。
一説として、作詞東くめ、作曲滝廉太郎の『鳩ぽっぽ』が、『鳩』の元歌となり、歌詞やメロディーが異なった形で掲載された、という指摘があります。
幼稚園唱歌が刊行されてから10年後の明治44年、当時の文部省が尋常小学生向けに「文部省唱歌」を編纂した。
そこには、くめ作詞・滝廉太郎作曲の「水あそび」「お正月」などは採用されたが、なぜか「鳩ぽっぽ」は入らず、歌い出しやメロディーが微妙に異なる「鳩」が作詞、作曲不詳として掲載された。
この辺りの詳しい経緯というのは分かっていません。
記事によれば、生前くめは、「ぽっぽっぽ〜で始まると、鳩ポッポか、汽車ポッポかわかりゃしない。だから、はじめから、鳩ぽっぽ~と歌い出しているんだよ」と語り、歌詞が変わってしまったことを残念がっていたようです。
また、文部省の歌が出た際には、文句を言おうかと悩んだものの、若い誰かの一生を傷つけるかもしれないので我慢した、と語っていたことが、義理の娘の証言で明らかになっています。
以下は、そんな東くめ作詞の『鳩ぽっぽ』と歌詞全文です。
『鳩ぽっぽ』
鳩ぽっぽ 鳩ぽっぽ
ぽっぽぽっぽと とんでこい
お寺の屋根から おりてこい
豆をやるから みなたべよ
たべてもすぐに かえらずに
ぽっぽぽっぽと 鳴いて遊べ
このように、「ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ」のほうの『鳩』とは歌詞の違いが大きく、たとえば、冒頭はタイトルと同様に「鳩ぽっぽ」で始まります。
また、曲調もだいぶ違うので、これが『鳩』の元歌かと言われると、判断は難しいかもしれません(参照 : 鳩ぽっぽ 『幼稚園唱歌』明治34年 東くめ 作詞 滝廉太郎 作曲)。
ただ、鳩に豆をやる情景の他に、発表の年代的にも、また、「鳩ぽっぽ」という印象的なフレーズにしても、影響を受けていることは間違いないのかもしれません。


