インセプションの冒頭
クリストファー・ノーラン監督の作品で、2010年に公開された、アメリカのSF映画『インセプション』。
インセプションに関しては、映画館では観ておらず、DVDで観たのですが、これは劇場で観ておきたかったな、と思うほど、迫力もあり、かつ繊細で哲学的な作品でもあります。
タイトルに用いられている「インセプション」という英語は、日本語では、「発端」や「始まり」という意味になります。
この「インセプション=発端」というタイトルは、相手の潜在意識に、あるアイディアを(夢を通して)植え付けようとする、「アイディアの発端」ということに由来します。
心理的トラウマや洗脳といった要素を描いた作品とも言えるかもしれません。
映画『インセプション』予告編
それでは、インセプションの冒頭は、どんな風に始まるでしょうか。
最初のシーンでは、レオナルド・ディカプリオ扮する主人公のドム・コブが、海岸で目覚めます。
コブが、警備員に捕らえられ、年老いたサイトーの部屋に連れていかれると、サイトーは、「私を殺しに来たのか」とコブに語りかけます。
そして、サイトーは、持っていた独楽を回しながら、「これを遠い昔に見たことがある。夢で会った男が持っていた。途方もない考えに取り憑かれた男だった。」と言います。
その後、同じ部屋で、渡辺謙演じる現在のサイトーと、コブ、そしてコブの相棒のアーサーが食事をしているシーンに移り、コブは、サイトーに、「もっとも強い寄生物は?」と問いかけます。
「もっとも強い寄生物は? バクテリア? ウイルス? 回虫? ─── アイデアです。感染力も強い。一度芽生えたら取り除けない。アイデアは形になると突き刺さる。ここ(頭を指差す)に。」(コブ)
出典 : クリストファー・ノーラン『インセプション』
映画のコンセプトを、ぐっと描写する引き締まった冒頭シーンです。
ちなみに、ノーラン監督は、インセプション制作に当たって、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『伝奇集』の短編「Las ruinas circulares(円鐶の廃墟)」や「El milagro secreto(隠れた奇跡)」から着想を得たそうです。