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童謡『かたつむり』歌詞の意味─「でんでんむしむし」とはなにか 全文と解説

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童謡『かたつむり』歌詞の意味─「でんでんむしむし」とはなにか 全文と解説

〈歌詞〉

でんでん むしむし かたつむり
お前のあたまは どこにある
つの出せ やり出せ あたま出せ

でんでん むしむし かたつむり
お前のめだまは どこにある
つの出せ やり出せ めだま出せ

概要と解説

でんでんむしむし、かたつむり、お前の頭はどこにある──という冒頭で馴染みのある童謡。

この歌のタイトルは『かたつむり』と言い、文部省編纂の教科書『尋常小学唱歌 第一学年用』に掲載された文部省唱歌です。

作者は不明ですが、作詞については、尋常小学唱歌編纂委員で『早春賦』などの代表作を持つ作詞家の吉丸一昌ではないかという研究もあります。

歌の一番では、頭はどこにある、とかたつむりに尋ね、「あたま出せ」とあります。

二番では、めだまはどこにある、と言い、「めだま出せ」と終わります。

殻に隠れているかたつむりに、子どもたちがはしゃいでいる光景を、歌詞にしたのかもしれません。

童謡『かたつむり』は、古くから伝わる「でんでんむしむし、つのだせ、やりだせ」というわらべ唄を下敷きに作られたと考えられています。

「でんでんむし」とは何か

歌詞の冒頭に登場する「でんでんむし」とは、かたつむりの別名です。もともとは「ででむし」と呼ばれていたものが変化したとされています。

この「でんでん」という言葉には、「出よ出よ」という意味があるという説があります。

かたつむりは触れるとすぐに殻に体を引っ込めてしまいます。そんなかたつむりに向かって、子どもたちが「出よ出よ」と声をかけたことから「でんでんむし」と呼ばれるようになった、というのが語源だという説です。

まさに、この童謡で歌われている光景そのものです。

殻に隠れたかたつむりに向かって、子どもたちが「あたま出せ」「めだま出せ」と呼びかける様子が、「でんでん(出よ出よ)」という言葉ともそのまま重なります。

「つの」と「やり」とは

歌詞に出てくる「つの出せ、やり出せ」の「つの」と「やり」とは、どちらもかたつむりの触角を指しているという説があります。

かたつむりには長い触角と短い触角の2対、合計4本の触角があります。長いほうの触角の先端に目がついており、短いほうは主に環境を探るために使われます。「つの」というのが小さな触覚のことで、「やり」というのが目玉のついた触覚ではないかと言われています。

「かたつむり」の「角」と「槍」とは、それぞれ一対ずつの触角を言い、「槍」は尖端に目玉のついている方のことで、これは殻の中に入っているかたつむりに呼びかけた言葉である。

出典 : 金田一春彦・安西愛子編『日本唱歌全集[上]明治篇』

また、やりは交尾のときに使われる独特の器官の「恋矢」だという説もあります。

かたつむりとなめくじの違い

かたつむりとは、「陸に棲む巻貝のうち、殻を持つもの」の通称となります。

ただし、かたつむりという言葉は日常語で、特定の分類を指すわけではなく、生物学的に厳密な定義はありません。

ああいう生き物を、ざっくりとかたつむりと呼んでいる、と言えるでしょう。

かたつむりの「かた」は、「笠に似た貝」「笠を着た虫」の意味で、「笠」が語源です。「つむり」は、つぶりなどと一緒で、貝の呼び名です。漢字で書くと、蝸牛になります。

かたつむりには、生物学的に厳密な定義はないと言いましたが、似た生き物として挙げられるなめくじも、実は定義がはっきりしていないようです。

かたつむりとなめくじの違いとしては、「殻があるかないか」というのが、ほとんど唯一の点として挙げられます。

確かにカタツムリとナメクジはよく似ています。カタツムリの殻を取ったら、ナメクジになりそうですね。

その通り、カタツムリとナメクジの最大のちがいは、殻があるかないか。ほかにはあまり、ちがいがありません。

出典 : カタツムリとナメクジは何がちがうの?

かたつむりとなめくじは、共通の祖先で、進化の過程において、殻をなくしたなめくじと、殻を持ったままだったかたつむりに分かれていった、と考えられています。

ただ、かたつむりは、殻と体が一体化しているので、殻だけを無理やり外そうとすると死んでしまいます。

ちなみに、かたつむりのもう一つの別名として「まいまい」があります。

これは関東地方を中心に使われてきた呼び名で、貝殻の「巻き巻き」が転じて「まいまい」になったという説や、子どもたちが「舞え舞え」とはやし立てたことに由来するという説があります。

「でんでんむし」を描いた童話

でんでんむしを題材にした作品として、童話作家・新美南吉の短編童話『でんでんむしのかなしみ』も広く知られています。

殻のなかに「悲しみ」を抱えていることに気づいたでんでんむしが、仲間に相談して回るうちに、誰もが自分の殻のなかに悲しみを持っていることを知る、という物語です。

最後にでんでんむしは、その悲しみと共に生きていくことを決意します。

新美南吉は『ごんぎつね』でも知られる童話作家で、『でんでんむしのかなしみ』は短い文章の中に深いテーマを持つ作品として、今も読み継がれています。

かたつむりという小さな生き物が、童謡でも童話でも、長く子どもたちの世界に息づいてきたのは、その愛らしい姿とともに、殻のなかに何かを隠しているような、どこか不思議な存在感があるからかもしれません。