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童謡

『鳩』『かたつむり』『桃太郎』の歌詞全文と意味

『鳩』『かたつむり』『桃太郎』の歌詞全文と意味

文部省唱歌では、「うさぎおいしかのやま」で始まる『ふるさと』以外に、現在もよく知られた有名な唱歌は数多くあります。

たとえば、第一学年用の文部省唱歌の一覧は、以下の通りとなっています。

  1. 日の丸の旗 (現在では「ひのまる」)
  2. おきやがりこぼし
  3. 人形
  4. ひよこ
  5. かたつむり
  6. 牛若丸
  7. 夕立
  8. 桃太郎
  9. 朝顔
  10. 池の鯉
  11. 親の恩
  12. 菊の花
  13. 木の葉
  14. 紙鳶の歌
  15. 花咲爺

この一学年用の文部省唱歌のなかで、今でもよく知られる、代表的な作品としては、『鳩』『かたつむり』『桃太郎』などが挙げられます。

一学年用の唱歌から、『鳩』『かたつむり』『桃太郎』の作者や歌詞全文、意味などを紹介したいと思います。

『鳩』〜ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ〜

ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ、豆がほしいか、そらやるぞ。

この歌詞の一節を聴くだけでも、親しみやすいメロディーが、頭のなかに浮かぶのではないでしょうか。

子供の頃に誰もが聴いたことのある有名なこの歌は、タイトルを『鳩』と言います。

作者は、作詞も作曲も不明で、1911年発行の文部省の国定教科書『尋常小学唱歌 第一学年用』に掲載されている唱歌です。

その後、1941年の国民学校用の教科書『ウタノホン』で、曲名が『鳩』から『ハトポッポ』に変えられ、その際、歌詞も微妙に変更されます。

改変後の『鳩(ハトポッポ)』の歌詞全文は、次の通りです。

『鳩』

ぽっぽっぽ
はとぽっぽ
豆がほしいか
そらやるぞ
みんなでいっしょに
食べに来い

ぽっぽっぽ
はとぽっぽ
豆はうまいか
食べたなら
みんなでなかよく遊ぼうよ

擬音語の「ぽっぽっぽ」とは、鳩の鳴き声です。これは鳩のなかでも、山鳩の鳴き声になります。

気軽に口ずさめる、「豆がほしいかそらやるぞ」という部分は、『鳩』の一番になります。

一番では、鳩に声をかけ、豆をあげよう、みんなで食べにおいで、と呼びかけます。

続きの二番では、「豆はうまいか 食べたなら みんなでなかよく遊ぼうよ」と、その豆を食べている鳩に、優しく語りかけるような歌詞となっています。

一学年向けの文部省唱歌ということもあり、シンプルで子供でも大変覚えやすい内容の歌です。

歌詞が変化した部分としては、もともとの1911年版では、一番の最後が、「みんなで仲善く食べに來い」に、二番の最後が「一度にそろって飛んで行け」となっています。

みんなで仲善く食べに來い → みんなでいっしょに食べに来い

一度にそろって飛んで行け → みんなで仲良くあそぼうよ

また、この『鳩』と似たような題名の歌として、日本で初めて口語の童謡を作詞した、東くめ作の『鳩ぽっぽ』があります。

東くめは、明治10年(1877年)に生まれ、昭和44年(1969年)に91歳で亡くなる童謡作詞家です。

教育学者だった夫の提案で、「子供の言葉による、子供が喜ぶ童謡」の作詞を始め、後輩で作曲家の滝廉太郎と組み、作品を残しています。

子供たちが歌いやすいような童謡を作った東くめ、その作品の一つとして、『鳩ぽっぽ』もあり、滝廉太郎作曲で、明治34年(1901年)刊行の『幼稚園唱歌』に収録されます。

しかし、『鳩』というと、あの「ぽっぽっぽ」が有名で、このくめ作詞の『鳩ぽっぽ』は、現在ではほとんど知られていません。

実は、この『鳩ぽっぽ』発表から10年後、文部省唱歌が編纂され、最初に触れた『鳩(ぽっぽっぽ、はとぽっぽ)』が、作者不明の歌として掲載されます。

この『鳩ぽっぽ』と、その後の『鳩』とは、一体どういった関係があるのでしょうか。

一説として、作詞くめ、作曲滝廉太郎の『鳩ぽっぽ』が、『鳩』の元歌となり、歌詞やメロディーが異なった形で掲載された、という指摘があります。

幼稚園唱歌が刊行されてから10年後の明治44年、当時の文部省が尋常小学生向けに「文部省唱歌」を編纂した。

そこには、くめ作詞・滝廉太郎作曲の「水あそび」「お正月」などは採用されたが、なぜか「鳩ぽっぽ」は入らず、歌い出しやメロディーが微妙に異なる「鳩」が作詞、作曲不詳として掲載された。

出典 :「ぽっぽっぽ 鳩ぽっぽ」に原曲あった?本家本元がミュージックチャイムに

この辺りの詳しい経緯というのは分かっていません。

ただ、この件に関し、生前くめは、「ぽっぽっぽ〜で始まると、鳩ポッポか、汽車ポッポかわかりゃしない。だから、はじめから、鳩ぽっぽ~と歌い出しているんだよ」と語り、歌詞が変わってしまったことを残念がっていたようです。

また、文部省の歌が出た際には、文句を言おうかと悩んだものの、若い誰かの一生を傷つけるかもしれないので我慢した、と語っていたことが、義理の娘の証言で明らかになっています。

以下は、東くめ作詞の『鳩ぽっぽ』と歌詞全文です。

『鳩ぽっぽ』

鳩ぽっぽ 鳩ぽっぽ
ぽっぽぽっぽと とんでこい
お寺の屋根から おりてこい
豆をやるから みなたべよ
たべてもすぐに かえらずに
ぽっぽぽっぽと 鳴いて遊べ

このように、「ぽっぽっぽ、鳩ぽっぽ」のほうの『鳩』とは歌詞の違いが結構あり、たとえば、冒頭は、タイトルと同様に「鳩ぽっぽ」で始まります。

また、曲調もだいぶ違うので、これが『鳩』の元歌かと言われると、判断は難しいかもしれません(動画 : 鳩ぽっぽ 『幼稚園唱歌』明治34年 東くめ 作詞  滝廉太郎 作曲)。

ただ、鳩に豆をやる情景の他に、発表の年代的にも、また、「鳩ぽっぽ」という印象的なフレーズにしても、影響を受けていることは間違いないのではないでしょうか。

ふるさと
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『かたつむり』〜でんでんむしむし、かたつむり〜

もう一つ、有名な文部省唱歌の一節として、「でんでんむしむし、かたつむり、お前の頭はどこにある」があります。

このフレーズも、誰もが一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。

この聴き馴染みのある冒頭で始まる唱歌のタイトルは、『かたつむり』です。『かたつむり』も、文部省編纂の教科書『尋常小学唱歌』の第一学年用に掲載されている唱歌です(動画 : かたつむり (でんでんむし)【歌あり】童謡)。

以下は、『かたつむり』の歌詞全文になります。

『かたつむり』

でんでん むしむし かたつむり
お前のあたまは どこにある
つの出せ やり出せ あたま出せ

でんでん むしむし かたつむり
お前のめだまは どこにある
つの出せ やり出せ めだま出せ

一番では、「お前の頭はどこにある」と、かたつむりに尋ね、「つの出せ、やり出せ、あたま出せ」とあります。

二番では、「お前のめだまはどこにある」と問いかけ、「つの出せ、やり出せ、めだま出せ」という形で終わります。

殻に隠れているかたつむりに、子供たちがはしゃいでいる光景を、歌詞にしたのかもしれません。

ところで、歌詞に出てくる「でんでんむし」とは、どういった意味で、「かたつむり」とは違いがあるのでしょうか。

そもそも、かたつむりとは、「陸に棲む巻貝のうち、殻を持つもの」の通称となります。

ただし、かたつむりという言葉は日常語で、特定の分類を指すわけではなく、生物学的に厳密な定義はありません。

ああいう生き物を、ざっくりと「かたつむり」と呼んでいる、ということが言えるでしょう。

かたつむりの「かた」は、「笠に似た貝」「笠を着た虫」の意味で、「笠」が語源となっています。「つむり」は、つぶりなどと一緒で、貝の呼び名です。

漢字で書くと、「蝸牛」になります。

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かたつむりには、生物学的に厳密な定義はありませんが、似た生き物として挙げられるなめくじも、実は定義が大雑把です。

かたつむりとなめくじの違いとしては、殻があるかないか、というのが、ほとんど唯一の点として挙げられます。

確かにカタツムリとナメクジはよく似ています。カタツムリの殻を取ったら、ナメクジになりそうですね。

その通り、カタツムリとナメクジの最大のちがいは、殻があるかないか。ほかにはあまり、ちがいがありません。

出典 : カタツムリとナメクジは何がちがうの?

かたつむりとなめくじは、共通の祖先で、進化の過程において、殻をなくしたなめくじと、殻を持ったままだったかたつむりに分かれていった、と考えられています。

ただ、かたつむりは、殻と体が一体化しているので、殻だけを無理やり外そうとすると死んでしまいます。

文部省唱歌の『かたつむり』で歌われる「でんでんむし」とは、かたつむりの別の呼び名(もともとは「ででむし」)で、同じ生き物を指し、かたつむりには、他に「まいまい」といった言い方もあります。

この「でんでんむし」の「でんでん」とは、「出よ出よ」という意味で、かたつむりが、触れるとすぐに殻のなかに体を隠してしまうので、子供たちが、「出よ出よ」と言ったことから、「でんでん虫」と呼ばれるようになった、という説があります。

まさに『かたつむり』で歌われた光景そのものと言えるでしょう。

一方、「まいまい」というのは、関東地方の方言で、貝殻の「巻き巻き」というのが「まいまい」になったという説や、子供たちが、「舞え舞え」とはやし立てたことに由来するという説があります。

また、昭和初期の本で、民俗学者の柳田國男は、もう少し違った角度で「かたつむり」の方言を説明しています。

柳田國男は、蝸牛、すなわち『かたつむり』の方言が、東北地方の北部と九州の西部でナメクジであり、同じく東北と九州でツブリであり、関東や四国でカタツムリ、中部や中国などでマイマイ、そしてデデムシは主として近畿地方というように、京都を中心に同心円状に分布することを発見し、これによって、蝸牛を表すことばが歴史的に同心円の外側から内側に向けて順次変化してきたと推定した。

出典 : 柳田國男『蝸牛考』|岩波書店

その他、平安時代の辞書では、「加太豆不利」(かたつぶり)とあり、京都では、長くこの呼び名だったようです。

この『かたつむり』は、古くから伝わる「でんでんむしむし、つのだせ、やりだせ」というわらべ唄を下敷きに作られたと考えられています。

文部省唱歌の『かたつむり』は、作者不明ですが、作詞については、尋常小学唱歌編纂委員で、代表作に「早春賦そうしゅんふ」などがある作詞家の吉丸一昌よしまるかずまさではないか、という研究があります。

ちなみに、でんでんむしを描いた作品で言えば、童話作家の新美南吉の短い童話『でんでんむしのかなしみ』も有名です。

これは、殻のなかに抱えた悲しみ、でも、その悲しみを誰もが持っていると、そのでんでんむしは気づき、そして、悲しみと生きていくことを決める、というお話です。

『桃太郎』〜ももたろうさん、ももたろうさん〜

文部省唱歌の一学年用のなかで有名な曲としては、『桃太郎』も挙げられます。

作者については、作曲は、代表作として『故郷ふるさと』『春が来た』『春の小川』『朧月夜おぼろづきよ』などがある岡野貞一で、作詞は不明です。

この『桃太郎』の歌詞は、おとぎ話の『桃太郎』のストーリーが描かれています。

歌詞の1番の「桃太郎さん桃太郎さん、お腰につけたきびだんご、一つ私にくださいな」というのはよく知られた一節ですが、実は歌詞には続きがあり、全部で6番まであります。

この歌詞の続きが、ちょっと怖い雰囲気もあり、ときどき話題となります。

以下は、『桃太郎』の歌詞全文です。

『桃太郎』

桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけたキビダンゴ
一つわたしに 下さいな

やりましょう やりましょう
これから鬼の征伐せいばつ
ついて行くなら やりましょう

行きましょう 行きましょう
あなたについて どこまでも
家来になって 行きましょう

そりゃ進め そりゃ進め
一度に攻めて攻めやぶり
つぶしてしまえ 鬼が島

おもしろい おもしろい
のこらず鬼を攻めふせて
分捕物ぶんどりものを えんやらや

万万歳 万万歳
お伴の犬や猿キジは
勇んで車を えんやらや

桃太郎が、鬼退治に向かい、途中、きびだんごをあげることで家来になった、犬や猿、キジと一緒に、鬼ヶ島に行きます。

前半は勇ましくものどかな雰囲気だった歌詞が、後半、4番辺りから、「つぶしてしまえ、鬼ヶ島」など、結構強めの表現になります。

5番の「分捕物」とは、奪い取ったもの、という意味です。おもしろい、おもしろいと鬼を全滅させ、物を奪い取り、えんやらやと持ち帰ってくる、というストーリー展開です。

画像 : 山東京伝『絵本宝七種』(鬼から奪った財宝の一つ「打ち出の小槌こづち」をふるう桃太郎) 1804年

この「えんやらや」とは、 複数の人が力を合わせて重いものを運ぶ際に出す掛け声に由来する言葉です。「えいや」や「えんやこら」も、同じ語源だと考えられます。

ちなみに、桃太郎、というおとぎ話は、一体いつ頃できたのでしょうか。

桃太郎というおとぎ話の成立年代は、正確には分かっていません。

ただ、口承文学としての原型の発祥は、室町時代末期から江戸時代初期頃とされます。

その後、江戸時代の草双紙の本や黄表紙版の『桃太郎』『桃太郎昔話』などの出版によって桃太郎の話は広まっていきます。

また、「桃から生まれた桃太郎」という冒頭の設定は、19世紀初頭の頃から見られた型で、その前は、「桃を食べて若返った夫婦が出産する」という型が主流だったようです。

以上、文部省唱歌の一学年用の代表的な歌『鳩』『かたつむり』『桃太郎』の作者と歌詞全文でした。