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雑学

おみくじの和歌、「ひきしおの引くはみちくるあしたあり心しずかにときをまつべし」

おみくじの和歌、「ひきしおの引くはみちくるあしたあり心しずかにときをまつべし」

お正月の風物詩と言えば初詣。そして、その初詣では、おみくじを引くことも一般的な風習となっています。

おみくじとは、神社やお寺で吉凶を占うために引くくじのことを指します。おみくじには、大吉であったり、凶であったりと、色々な運勢が書かれ、初詣にあたって、今年一年を占う、という人も多いでしょう。

以前、初詣に行った際に、自分の引いたおみくじは中吉で、そのときのおみくじの内容を、ざっくりと要約すれば、待つこと、控えること、今は信じて待っていること。また、恋愛については、「愛しぬくこと」とあり、じっくり、今を大切にしよう、と改めて思わされる内容でした。

おみくじには、吉凶や運勢の中身だけでなく、日本古来の文学表現である和歌も添えられています。

一体、なぜおみくじに和歌が添えられているのでしょうか。

その理由は、おみくじの本質が、そもそも和歌の方だから、と言われています。神様のお告げを、和歌を通して伝える。だから、重要なのは、大吉や小吉というよりも、この和歌を読む、ということのようです。

中世日本文学の研究者である成蹊大学の平野多恵教授は、このおみくじと和歌の関連性について、次のように語っています。

――まず、この本のタイトルとなっている「歌占」とは聞き慣れない言葉ですが、これがおみくじの源流となったものだそうですね?

神社のおみくじに和歌が書かれているのを見たことがありますか。そもそも、この世ではじめて五七五七七、三十一文字の和歌を詠んだのは天照大神の弟である素戔嗚尊すさのおのみことと伝えられています。

平安時代以降は、巫女などのシャーマンを通して神さまのお告げが和歌によって人々に示されるようになりました。それを「歌占うたうら」といいます。その歌占は室町時代には占い本となって、江戸時代には和歌のおみくじ本が出版されて、それが現在のおみくじの和歌につながっています。

――たしかに、おみくじを引くと和歌が書いてありますね。大吉か小吉かしか気に留めていませんでしたが、和歌にはどんな意味があるんですか?

日本の神さまは、人間に何かを伝えるときに、和歌でお告げを示しました。もともとの歌占は神さまのお告げの歌をそのときの状況に合わせて解釈するもので、吉凶などは付いていませんでした。

すべてのお告げが和歌で示されたわけではないのですが、夢の中で神さまのお告げの歌をいただくことも多かったようです。天皇の命令でつくられた勅撰和歌集(『拾遺集』や『新古今集』など)には、そのような歌が多く収められています。当時の人々にとって、神さまのお告げの歌はとても重要なものだったのです。

出典 :「和歌」は神様のお告げだった〜おみくじを10倍楽しく引く方法

起源を辿ると、和歌こそが、神のお告げとしておみくじの本質ということのようです。

僕が、その年に引いたおみくじに添えられていた和歌は、「ひきしおの引くはみちくるあしたあり心しずかにときをまつべし」です。

この和歌を現代語訳すると、「引き潮があるということは、満ち潮になる明日があるということ。今は心静かに、時が来るのを待つとよい」となります。

これは、もう少し分かりやすく言えば、「今は誰にも分かってもらえない苦しみがあるでしょうが、ここはじっと信心し、行いを正しくして待っていれば、必ず幸せが訪れるときが来るでしょう」といった意味になります。

確かに、この和歌が掲載されていたおみくじの運勢にも、先ほど触れたように、「待つ」ということの重要性が記されています。

ところで、このおみくじの和歌の作者は誰なのでしょうか。

どうやら、この和歌の作者は、現在のおみくじの形を作った明治時代の二所山田神社の宮司さんのようです。

ほとんどのおみくじは和歌を詠んでいる。二所山田神社の23代目宮司・宮本公胤さんによると、正しいおみくじの読み方は「まず和歌を詠み、その意味を理解し、解説として運勢や具体的な『縁談』や『願望』を読む」。

で、この和歌は、宮本重胤氏と22代目宮司・清胤氏が「1000年を越える奉仕神社の杜に夜々に潔斎をしてこもりつつ、神前に御祈願をこめ、ご啓示をたまわって書き上げた」そうだ。

お二方は、歌人として「抜群の知名度」というわけではないが、じつは「もっとも詠まれている歌人」と言ってもいい。こうして誕生したおみくじは創設当時から100年も文面やスタイルは変えていない。

不登校新聞 : 知りたかった「おみくじのそこんとこ」

記事掲載時(2008年時点)で、おみくじを製造する神社は6社あり、この二所山田神社が創設した女子道社の製造するおみくじが、7割のシェアを誇っていると言います。

和歌に関しては、この方々が作者のものだけでなく、万葉集や古今和歌集から持ってきていることも多いようです。