〈景品表示法に基づく表記〉当サイトは、記事内に広告を含んでいます。

言葉の意味・由来

コロボックルとは

コロボックルとは

芸大が舞台になっている、羽海野チカさんの漫画『ハチミツとクローバー』(通称ハチクロ)を読んでいると、その一巻に「コロボックル」という言葉が登場します。

主要な登場人物の一人で、天才的な芸術的感性を持っている小柄な女の子の花本はぐみ(愛称は「はぐちゃん」)に対し、芸大の先輩の森田忍が、分かりづらい愛情表現として「コロボックル」と呼んでいる場面が描かれています。

物語の序盤で、森田さんが、さといもの葉っぱをはぐちゃんに傘のようにして持たせ、コロボックルに見立てているシーンがあります。

画像 : 羽海野チカ『ハチミツとクローバー〈1〉』

はぐちゃんは、森田さんが行った、いきなりの意味不明な対応にすっかり怯えます。しかし、この奇行が、実は好意を抱いていたゆえの行動だった、ということに、誰も気づくことはありませんでした。

竹本は、かたわらの真山にも気づかれるほどあからさまに、はぐみに一目惚れしてしまう。だが、その竹本に今朝の礼を言いに現れた忍もまた、はぐみに一目で好意を抱く。だが、忍は小柄なはぐみを「コロボックル」呼ばわりし、その名を連呼しながら彼女のまわりをぐるぐる周り、写真を撮影しまくるという奇行に走る。その光景から、忍がはぐみに恋心を抱いている事に気づく者は、誰一人いなかった。

出典 : ハチミツとクローバー1巻 あらすじ|マンガペディア

さて、この「コロボックル」という言葉が、一体どういう意味なのか、漫画を読んでいるだけでは、よくわからないという人もいるかもしれません。

コロボックルとは、ハチクロ内の独自の用語ではなく、アイヌの伝説に出てくる小さな民族を指します。

アイヌの伝説に現れる矮小民族。アイヌ語で「ふきの葉の下の人」の意で,雨が降ると1本のふきの葉の下に何人かが集ることができるほど小さかったという。伝説によれば,アイヌ以前に先住していた民族で,初めアイヌと平和に交際していたが,のち争いを起して北方に去った。

出典 : コロボックルとは|コトバンク

コロボックルではなく、コロポックルという表記の場合もありますが、これは、アイヌ語では [p] と [b] が同じ音素で区別しないことによるもので、呼び方は違っても意味に違いはありません。

コロボックルとは、アイヌ語で「ふきの下の人」という意味です。ただ、本来は、「下に住む人」という意で、穴に住む人を指したものだと言います。

コロボックルは、穴の中に住み、一枚のふきの葉の下に、だいたい10人くらいが入れるほどの大きさで、笹の葉の舟で漁に出ます。漁が得意で、大きなクジラなども獲物にするほどだったようです。

他に、特徴としては、恥ずかしがり屋で、あまり人前には出ず、夜中にこっそり食べ物を置いていく、といった優しさを持っているといった話もあります。

コロボックルの伝説は、北海道や樺太、南千島などに伝わり、呼び名も、トィチセウンクルやトィチセコッチャカムィやトンチ、トチウングルなど、「竪穴に住む人」や「土の家に住む人」といった意味の別名で呼ばれていることもあります。

また、釧路などでは、「土の家を持つ神」として、穴に住む小人の話があり、いずれも、似たような特徴の小人に関する伝説が残っているようです。

伝承におけるコロボックルは、「神様」であったり、「妖精」であったり、といった存在だったのでしょう。

北海道のお土産として、「じゃがポックル」というじゃがいもが原材料のポテトのようなお菓子がありますが、このお菓子の名前も、「コロボックル(コロポックル)」に由来します。

画像 : じゃがポックル|カルビー

ハチクロのなかで、森田さんが、「コロボックル」としてはぐちゃんを見立てたのも、小柄な姿に、このふきの葉の下の小人をイメージしたからなのでしょう。

ハチクロを特集した雑誌にあったハチクロ辞典では、「コロボックル」の項目に、次のような記載があります。

アイヌ語で「蕗の葉の下の人」という意味を持つ、小人族の名前。本当の身長は3センチ弱。体重1グラムくらい。森田センパイは、はぐをコロボックルと呼びながら可愛がる(わかりにくすぎる愛情表現)。はぐは、さといもの葉がよく似合うのだった。

出典 :『CONTINUE SPECIAL』

また、コロボックルについては、佐藤さとるさんの名作群を読んでほしい、と紹介されています。

佐藤さとるさんは、1927年に生まれ、2017年に亡くなる、日本の童話作家で、コロボックルと人間の交流を描いた『コロボックル物語』というファンタジー小説のシリーズで知られています。

私たちが、すっと読み継いでいきたい物語。250万人が愛した、日本の小人(コロボックル)の物語、復刊! ーーびっくりするほど綺麗なつばきが咲き、美しい泉が湧き出る「ぼくの小山」。ここは、コロボックルと呼ばれる小人の伝説がある山だった。ある日、小川を流れる靴の中で、小指ほどしかない小さな人たちが、ぼくに向かって手を振った。うわあ、この山を守らなきゃ! 日本初・本格的ファンタジーの傑作。

出典 : コロボックル物語1 だれも知らない小さな国

ただ、コロボックルの身長が3センチであったり、手のひらサイズくらいの大きさというのは、佐藤さとるさんの物語によるイメージや『一寸法師』などによって広がった印象なのかもしれません。

実際の伝承では、背は、アイヌの人々よりも少し低いくらいだと言われているようです。

以上、ハチクロにも出てくる、アイヌの伝説の小人「コロボックル」でした。