言葉の意味・由来

店員を定員とする間違いの他に、警察駄々、レンシレンジ、永遠と【意味と誤用】

店員を定員とする間違いの他に、警察駄々、レンシレンジ、永遠と【意味と誤用】

言葉には、文字と読みとあり、音で覚えているまま文字として表記すると、間違っている場合があります。

たとえば、有名な文字と音に関する間違いでは、「雰囲気」を「ふんいき」ではなく、「ふいんき」だと思っている、という例があります。

結果、「ふいんき」と入れても漢字変換ができない、といった話も以前は耳にしましたが、最近では、パソコンやスマホでも、「ふいんき」と入力すると「雰囲気」に変換されるので、もしかしたら間違いであると知らない、ということも増えているかもしれません。

その他、「そうしないわけにはいかない」ということを意味する、「せざるを得ない」という表現を、耳で覚えたまま、脳内で「せざる負えない」と変換して覚えてしまっている、という場合もあります。

この表現の使用例としては、たとえば、「行かないわけにはいかない」を意味したい場合には、「行かざるを得ない」となります。

○行かざるを得ない
×行かざる負えない

○やむを得ない
×やむ負えない

こういった現象は色々な用語で見られ、意味の繋がりからなんとなく理解できる言葉もあれば、全く違う意味で誤用していることもあります。

「店員」を「定員」

全く違う意味で誤用になっている一つが、「店員」を「定員」と書いているケースです。

店員と定員は違う意味ですが、店員の音である「てんいん」を、普段「ていいん」と言っている(あるいは聞こえている)ことから、漢字を当てはめて「定員」としているのかもしれません。

Twitterで、「定員さん」と検索すると、「店員さん」と間違えて使っているだろう人もたくさん見かけます。

店員とは、「お店の人、その商店の従業員」を意味します。

一方、定員とは、「組織に関し規則で定めてある人数(の枠)。また、乗物・会場などの収容人数の、安全限度として定めてある上限」を意味します。

大学の入学定員や、ジェットコースターの乗車定員などといった場面で使用します。

店員と定員は、全く意味として異なっているので注意したほうがよいでしょう。

「警察沙汰」を「警察駄々」

また、「警察沙汰ざた」という言葉を、「警察駄々だだ」と書いているケースも見られます。

この場合も、「けいさつざた」という音を、「けいさつだだ」と聞き取り、頭のなかで「警察駄々」と変換したのか、あるいは、誰かが使っているのを目にしたことから、「警察駄々」という言葉があるという理解に繋がったのでしょう。

警察沙汰とは、「警察に関わる出来事、事態のこと」を意味し、事件や事故など、悪い意味合いで使われることの多い言葉です。

後半に付けられる「沙汰さた」とは、色々と意味があり、「物事を処理すること、特に、物事の善悪・是非などを論じ定めること」「便り、知らせ」「話題として取り上げること、うわさにすること」「問題となるような事件、その是非が問われるような行為」などを指します。

沙汰を使った言葉としては、「音沙汰さたがない(ずっと連絡がない)」「取り沙汰ざたされる(話題に取り上げられて処置・処置の対象となるさま。)」「正気の沙汰さたではない(正常な判断とは思えない)」などが挙げられます。

一方の「駄々」とは、「子供が甘えてわがままを言うこと」を意味し、「駄々をこねる」といった表現があります。

音の類似に加え、警察に対して、駄々をこねるようなイメージもあり、警察駄々という連想に繋がったのかもしれませんが、正しくは「警察沙汰」となります。

「電子レンジ」を「レンシレンジ」

電子レンジとは、ものを温めることのできる家電製品の一つですが、この「電子レンジ」を、「レンシレンジ」だと思っている人も結構います。

ある調査によれば、15〜29歳の男女のうち、電子レンジのことをレンシレンジだと思っていた人の割合は、22%という結果が出ています。

画像 : 10代~20代の22%が電子レンジのことを「レンシレンジ」だと思っていたと回答

Twitterで検索しても、確かにちらほら「レンシレンジ」と書いている人がいます。

レンシレンジに関しては、意味ではなく、完全に音だけで「レンシレンジ」という認識になっているのでしょう。

「延々と」を「永遠と」

意味も似ているゆえの間違いとしては、「延々えんえんと」を「永遠えいえんと」と表記しているケースもあります。

この「延々」とは、「いつまでも長く続く様」を意味し、たとえば、「その夜は、友人の愚痴を延々と聞いていた」や、「会議が延々と続いた」など、基本的にだらだらと長く続いているような状況を描写する際に使われます。

音が似ていること、また、延々という言葉があまり見慣れないことから、両者を混同しているのかもしれませんが、延々と永遠では、意味合いに違いがあります。

延々の場合、「終わりがいつかは分からなかったとしても、いつかは終わる」ということが前提なのに対し、永遠は、「終わりがなく、このままずっと続いていく」というニュアンスになります。

また、どうしても「永遠」を使いたい場合は、「永遠“と”」というのは使い方として間違っているので、「永遠“に”」と変え、「永遠に続く」などとしたほうがよいでしょう。

ただ、先ほど触れたように、「延々と」というのは、あくまで終わりが存在することが前提となっているので、「話し合い」などに対し、「永遠に話し合いが続いた」とするのは違和感のある表現と言えるでしょう。

まとめ

最後にもう一度、この記事で紹介した、音によって記憶し、間違った表記をしていると考えられる事例を挙げたいと思います。

○店員 ×定員

○警察沙汰 ×警察駄々

○電子レンジ ×レンシレンジ

○延々と ×永遠と

普段、耳で入ってきたり喋っているなど音で覚えていることを、そのまま文字にしようとして、こういった間違いが生じるのでしょう。

子供の頃で言えば、「体育」は、「たいいく」ですが、しゃべり言葉では「たいく」と言っていたり聞こえている場合も多く、また、「原因」も、本来「げんいん」ですが、「げいいん」と思っている人も少なくないのではないでしょうか。

そのような文字表記と読みの違いによって、無意識のうちに誤ったまま覚えていることは、割と日常で見られる現象とも言えるかもしれません。

言葉は時代とともに柔軟に変化しますし、自分自身も、本来の意味と間違って覚えている言葉もあるでしょう。必ずしも、「正しい」「誤用」と決めつけることが良いことだとは限らない、という指摘もあります。

一方で、意味や音が次第に変化して捉えられていくことと、全く意味の違う言葉を音に引きずられて使っているのは事情が異なる、という意見もあるでしょう。

また、決して日常的に使わない難しい言葉ではなく、ありふれた言葉に関する間違いに対し、気持ちが悪い、と感じる人もいます。

ネット上での投稿を見ていると「店員」を「定員」と打つ人が結構多くていつも気になってしまう。正しい言葉は知っているけれど敢えて話し言葉として崩しているとか、読み方が同じものをうっかり誤変換してしまうならばそこまで気にならないけれど、小学生で習う漢字で構成されていてしかも一般的によくつかわれている言葉なのにずっと間違いに気づかずに堂々とそれらを連発していることがすごく気持ち悪く感じる。

出典 : 「店員さん」を「定員さん」と書く人が気持ち悪い

確かに、これほど日常で使われる言葉で、明らかに意味が違って想像で補うのも難しそうな誤用を、誰も指摘しなかったのだろうか、ということも含めて、気になる感覚も分からないではありません。

日本語の乱れ、という問題は、その境界線がそれぞれで異なるゆえに、一概に言えない難しさもあるでしょう。