江戸川乱歩の名前の由来
江戸川乱歩、という明治時代に生まれ、大正から昭和にかけて活躍した作家がいます。
江戸川乱歩は、1894年に三重県に生まれ、1965年にくも膜下出血のために亡くなった、日本を代表する小説家、推理作家です。
江戸川乱歩
少年時代から文学に慣れ親しんだ江戸川乱歩。小学生、中学生の頃から多くの小説を読み、早稲田大学政治経済学科に入学し、21歳のときに、アメリカの作家エドガー・アラン・ポーと、イギリスの作家コナン・ドイルの推理小説に出会います。
卒業後は、造船所の職員や下宿経営、古本屋経営などの職を転々とし、29歳のときに、デビュー作『二銭銅貨』で世に出ます。
乱歩の代表作としては、『陰獣』や『怪人二十面相』などがあり、自伝『探偵小説四十年』も残しています。
そのころ、東京中の町という町、家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。
「二十面相」というのは、毎日毎日、新聞記事をにぎわしている、ふしぎな盗賊のあだ名です。その賊は二十のまったくちがった顔を持っているといわれていました。つまり、変装がとびきりじょうずなのです。
出典 : 江戸川乱歩『怪人二十面相』
この「江戸川乱歩」という名前はペンネームで、本名は、平井太郎と言います。
本名の平井太郎では、作家としてはちょっと印象も弱く、ペンネームが、物凄く活きているように思います。
江戸川乱歩というペンネームは、先ほども触れた、アメリカの詩人で推理小説の元祖でもあるエドガー・アラン・ポーに由来します。
並べて聞くと、響きがそっくり。エドガー・アラン・ポーをもじって、江戸川乱歩、という名前になった、というわけです。もともと江戸川乱歩自身が、ポーの影響を受け、ファンだったことから、名前の音を借りてペンネームにしたようです。
江戸川乱歩が、このペンネームを最初に使ったのは、古本屋時代に、友人と会員制の雑誌の刊行を計画したときのこと。
その広告に、江戸川藍峯という筆名を掲載します。ただ、この雑誌自体は実現しませんでした。
しかし、この古びた雰囲気の字に納得のいかなかった江戸川乱歩は、考えた末に、「乱歩」という字を当て、『二銭銅貨』のときに使います。
確かに、「藍峯」では、ちょっと難しすぎる印象を受けます。「江戸川乱歩」というと、見た目的にも覚えやすく、「乱歩」という二字がほのめかす危うい雰囲気も、いっそう惹きつける名前となっているかもしれません。
以上、作家の江戸川乱歩の名前の由来でした。