日本文学

金木犀の短歌と音楽

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金木犀の短歌と音楽

金木犀

秋の風物詩の一つに、「金木犀の香り」があります。

秋がいよいよ深まってくる頃に、どこからともなく漂ってくる金木犀の甘く風流な香り。秋の肌寒く少し寂しい心地のときに、ほんのりと優しく幻想的な雰囲気をもたらしてくれる花です。

金木犀は寒さに弱いため、北海道などでは自然に咲くことはないものの、日本の広い地域で香りを楽しむことができます。

秋の印象と深く繋がっているだけに、古来より和歌で詠まれてきたのだろうと思われるかもしれませんが、金木犀を詠んだ古い和歌というのはないようです。

なぜ、金木犀の和歌がないのでしょう。

理由は、金木犀が日本にやってきたのが江戸時代になってからだから、ということにあります。

中国南部原産。日本には江戸時代に雄株が渡来し、これが挿し木で北海道と沖縄以外の日本中に増やされた。栽培北限は、東北南部。(太平洋側は宮城、日本海側は秋田)

出典 : 金木犀|Wikipedia

そういった歴史的背景ゆえに、古い和歌の世界には金木犀は咲いていないかもしれませんが、近現代になってからの短歌の世界では、金木犀も色々な歌のなかで姿を見せます。

ゆつくりと私は道を踏みはづす金木犀のかをりの中で 筒井(笹井)宏之

夜はいい 金木犀の金粉の数ほど君が嘘ついている 吉川宏志

金木犀の香れる路地に入りゆかば会ひたきひとにいつでも会へる 高田流子

金木犀の花の微細な十字架が散りつもるすなはち今朝は雨なり 日置俊次

また、短歌だけでなく、現代の「歌」と言えば音楽の世界もありますが、音楽でも金木犀を歌った素敵な曲があります。

たとえば、フジファブリックの『赤黄色の金木犀』やきのこ帝国の『金木犀の夜』は、秋の金木犀が咲く切ない雰囲気におすすめの曲です。

フジファブリックの『赤黄色の金木犀』は、2004年発売。バンドにとって3枚目のシングルです。若くして亡くなったボーカル&ギターの志村正彦さんが作詞作曲を担当しています。

きのこ帝国の『金木犀の夜』は、2018年発売のアルバム収録曲で、作詞作曲はボーカル&ギターの佐藤千亜妃さんが担当しています。

どちらの曲も、金木犀の甘い香りと切なさを連想させるような、心に染み渡る歌詞と曲です。

また、曲の名前ではありませんが、「キンモクセイ」というバンドもいます。これは秋の曲というわけではないかもしれませんが、かつて『二人のアカボシ』という曲がヒット、紅白出場も果たしています。

バンド名の由来は、ボーカルの伊藤さんが幼い頃から家の前にあった金木犀の香りが好きで、金木犀の香りを嗅ぐと昔の記憶が蘇ってきて懐かしい気分になり、自分たちの音楽もそういった懐かしさを、という理由から命名されたそうです。

古い和歌にはないものの、金木犀の到来にともなって、数々の「金木犀の歌」がつくられています。