斎藤茂吉〜春がすみとほくながるる西空に入日おほきくなりにけるかも〜意味と解釈
〈原文〉
春がすみとほくながるる西空に入日おほきくなりにけるかも
〈現代語訳〉
春霞が遠く流れている西の空に、今沈もうとしている太陽が大きくなっているよ
概要
斎藤茂吉は、1882年(明治15年)に山形県で生まれ、1953年(昭和28年)に亡くなる精神科医であり歌人です。
斎藤茂吉
東京大学の医科に在学中、伊藤左千夫に師事し、短歌の創作を本格的に始め、1913年(大正2年)に歌集『赤光』で注目を浴びます。
精神科医としても活躍し、青山脳病院の院長なども勤めながら、歌人としても活動、歌集17冊の他、評論や随筆も数多く残しています。
斎藤茂吉は夕陽にまつわる多くの短歌をつくりましたが、冒頭の短歌は、斎藤茂吉が結婚してまもない頃に詠んだ作品で、当時住んでいた青山から眺めた景色を描いています。
春霞のなかに沈んでいく夕陽が、ずっと大きくなって見えることへの美しさと、ほのかに漂う悲しみが歌われています。
その頃の東京は高いビルもなく、地平線に沈む太陽が、とても大きく見えたようです。
第二歌集の『あらたま』に収録されています。