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言葉の意味・由来

同じ穴の狢とは〜意味や狸との違い〜

同じ穴の狢とは〜意味や狸との違い〜

同じ穴の狢とは

日本語の諺に、「同じ穴のムジナ」という言葉があります。

日常でも、「そんなことをしたら、彼らと同じ穴の狢だ」といった使い方がされ、普段からときおり耳にすることもあるのではないでしょうか。

この「同じ穴の狢」とは、「一見別なように見えても、実は同類である」という意味の諺で、悪い意味合いの際に使います。

誰かの悪口を言っていた人間が、結局その言っていた相手と似たようなことをしていた場合、「同じ穴の狢じゃないか」と言われることもあるかもしれません。このように、良い意味ではなく、批判的なニュアンスで使用されます。

この言葉は、同じ穴にんでいる「狢」という比喩から、一見別のように見えても、実は同類だ、という意味になります。

狢はなんの動物か

それでは、この「狢」とは、一体なんの動物なのでしょうか。

狢とは、基本的に、「ニホンアナグマ」のことを指します。アナグマは、クマとつきますが、クマではなくイタチ科の動物で、爪は鋭く、名前の通り、穴を掘って巣穴とします。

ニホンアナグマ

ただし、狢は、アナグマだけでなく、タヌキやハクビシンを意味することもあり、時代や地域によっては、アナグマもタヌキもハクビシンも区別なくまとめて捉えていることもあるようです。

タヌキも、穴に入ることは好きなものの、アナグマのように穴を掘ること自体はそれほど得意な動物ではありません。

狢(アナグマ)もタヌキもキツネも、日本では古くから、人間を化かす妖怪として描かれています。

小泉八雲『狢』

たとえば、小泉八雲の描いた怪談話の一つに、のっぺらぼうとなって人間を化かす『狢』という話があります。

小泉八雲の『狢』は、とても短く、青空文庫で全文を読むことができますが、あらすじをざっくり言うと、次の通りです(小泉八雲『狢』)。

昔、年老いた商人が、ある夜、東京の赤坂への道にある紀伊国坂という坂の途中、濠の縁にかがんで今にも身を投げるのではないかと心配になるような思いつめた女性を見かけました。

商人は、ひどく泣いている女性を、親切心から励まし、お助けできることがあれば喜んでお助け申しましょう、と幾度も声をかけ、ようやく振り返った女性は、目も鼻も口もない、のっぺらぼうでした。

びっくりした商人が、慌てて駆け出し、暗い紀伊国坂を走り続けると、その先に提灯があり、屋台の蕎麦屋を見つけました。

蕎麦屋のもとに駆け込み、狼狽しながら、女を見た、女が見せたのだ、それが何かは言えない、と伝えると、その蕎麦屋が、「へえ、見たものは、こんなものか」と言ったのですが、その男の顔も、卵のようになにもなかった、という物語です。

文中にある紀国坂とは、紀伊国坂のこと。八雲が「知らない事」と言っているこの坂の謂れは、江戸時代、現在の赤坂御所、迎賓館のある敷地をはじめ、このあたり一帯に紀伊和歌山藩徳川家上屋敷(上屋敷とは大名とその家族が住む屋敷のことで、江戸城の近くに置かれた)があったことに由来する。

最寄りは地下鉄の赤坂見附駅。赤坂見附の交差点から、首都高速4号新宿線と平行して四谷方面に登ってゆく途中の坂道が紀伊国坂である。

出典 : 赤坂見附・紀伊国坂―のっぺらぼうと西欧化

なんとも救いのない、親切心で声をかけた商人が化かされ、驚かされる、というお話ですが、この話に出てくるように、狢は人を化かす動物として描かれ、その歴史は、古く、日本書紀にまで遡ることができます。

日本書紀には、「陸奥国にムジナ有り。人となりて歌う」という記載があり、この頃にはすでに狢が人を化かす、という概念があったと考えられています。

同じ穴の狢、という表現は、一説には、人を化かすタヌキと同じように狢も穴に棲むという習性を持っていることに由来すると言われています。

同じ穴の狢と同義で、別の言い方に、「同じ穴の狸」「同じ穴の狐」「一つ穴の狢」などがあり、古くは「同じ穴の狐」という表現が多く、近代になって「同じ穴の狢」になっていったようです。

狢(アナグマ)とタヌキの違い

先ほど、狢は、アナグマの意味で、また場合によってはタヌキも含むこともあると言いましたが、アナグマとタヌキでは、どういった違いがあるのでしょうか。

左がタヌキ、右がアナグマ(八木山動物園)

これは仙台の八木山動物園の「タヌキシリーズ(2) タヌキ見分け方講座」で解説されていたタヌキとアナグマの違いですが、タヌキは、黒い模様が目の横に広がり、アナグマは、黒い模様が目の上下に走っています。

また、タヌキとアナグマでは、耳の大きさにも違いがあり、写真を見ても分かる通り、アナグマのほうが耳が小さいという特徴もあります。

一見すると、タヌキとアナグマは似ているようにも見えますが、動画で見ると、違いが結構はっきりしています。

動画 : 気付いたらすぐそこにいたニホンアナグマ!?

アナグマは、ぱっと見はタヌキよりもほっそりして、イタチの雰囲気が出ています。ただ、秋になると、冬に備えて脂肪を溜め込むことから、だいぶふっくらとした体型になります。

動画 : 猫の集会に参加したいタヌキ

一方、タヌキのほうが、アナグマと比較して、丸っとしたシルエットが特徴となっています。

以上、「同じ穴の狢」の意味や、狢とタヌキの違いでした。