〈景品表示法に基づく表記〉当サイトは、記事内に広告を含んでいます。

言葉の意味・由来

元服とは〜意味と語源〜

元服とは〜意味と語源〜

現代の日本では、子供から大人になる成人の儀式として、「成人式」が開かれます。

一方、昔の日本においても、「元服げんぷく」「初冠ういこうぶり」「裳着もぎ」などと呼ばれる成人の儀式がありました。

元服とは、中国古代の儀礼に起源を持つ、公家や武家のあいだで行われた男子成人の儀式です。

元服と同じ意味で、初冠、冠礼、首服、加冠、初元結はつもとゆいなどと表現することもあります。

たとえば、平安時代の歌物語『伊勢物語』の冒頭では、「初冠」という言葉が登場します。

昔、男初冠して、平城の京春日の里に、しるよしして、狩にいにけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。

出典 : 『伊勢物語』

この『伊勢物語』冒頭を現代語訳すると、「昔、ある男が、元服(成人)して、旧都の奈良の春日の里に、領地を持っている縁で、鷹狩りに行った。」となります。

初冠の読み方は、「ういこうぶり」と言い、元服と同じく、「公家社会、武家社会の男子の成人の儀式」を意味します。

この「初冠」という字は、男子が成人するに当たり、子供の髪型を成人の髪型に改め、「初めて冠をかぶること」に由来します。

伊勢物語の冒頭伊勢物語の冒頭 〈原文〉 昔、男初冠ういこうぶりして、平城の京春日かすがの里に、しるよしして、狩にいにけり。その里に、いとなまめ...

それでは、「元服」という字の「元」と「服」は、一体何を表しているのでしょうか。

元服の場合も、「元」は「首(頭)」を表し、「服」は「冠」や「着用」を意味することから、「頭に冠をつける」という意味合いの言葉が語源となります。

大きな首の人の形で、げんはもとは「くび」の意味です。『説文解字』に「始めなり」とあり、「元始(はじめ)、もと」の意味もあります。

また首は人間の身体の中でも重要な部分ですから、元には人の長、首領の意味や「おおきい」という意味もあります。

出典 : 第12回 人の形から生まれた文字〔1〕漢字の成り立ち

元、という漢字自体が、人間の首の部分の形がもととなり、「首」だけでなく「始め」という意味もあります。

このことから、元首、元日、元素、元祖、といった熟語も存在します。

公家以上の身分の場合は、冠でしたが、武家社会では、冠の代わりに烏帽子えぼしを用いて元服が行われます。

公家以上の人たちの間では、古来より、男性がはじめて冠をかぶる儀式を「元服」といいました。

その際、眉毛をそりおとして、額ぎわに高眉をつけ、鉄漿かねで歯を染めましたが、武家社会では、冠の代わりに烏帽子をかぶりました。

出典 : きもの用語大全「元服とは」

冒頭でも少し触れたように、元服の起源は、古代中国で行われた、冠をつけ、成年となる成人儀礼の「冠礼かんれい」と考えられています。

この冠礼が日本に伝わり、奈良時代以降に、「元服」として通過儀礼の一つとなります。

元服(初冠)の儀式が行われる年齢というのは、はっきりと定められていたわけではありません。

大体15歳前後から、場合によっては20歳頃と幅があり、天皇、皇太子の例では11〜17歳くらいが通例だったそうです。

天皇の元服は、正月の1日から5日のあいだの吉日を選び、そのことに倣って、一般でも正月に行われることが多く、時間帯は夜でした(江戸時代には日中に行われることも多くなります)。

元服の際の服装は、朝廷の男子の正装である束帯そくたいで、眉毛を剃り落とし、額際に高眉をつけ、歯を染めます。

画像 : 束帯と部位の名称

室町中期以降、元服という文化は、前髪を剃って月代さかやきにする、といった略式の形で民間にも普及します。

元服に際しては、名前を変え、幼名を廃して実名を名乗るようになります。

一方、男子の元服に当たる、公家の女子の成人式として、「裳着もぎ」があります。

裳着とは、主に平安時代の宮廷貴族社会で行われた女子の成人式で、大人になった印として、十二単じゅうにひとえを構成する一つで腰から下にまとう「裳」を着ける儀式のことです。

画像 : 裳|Wikipedia

裳着が行われる年齢は、12〜14歳頃(通説では初潮を迎えたあとの10代前半)です。

裳着は、配偶者が決まったり、その見込みが高くなったときに行うことが多く、この儀式によって結婚の資格を得たことを意味します。

元服や裳着などの成人儀礼は、当時はあくまで上流階級のしきたりでした。

ただ、庶民のあいだでは、年齢とは関係なく、「一人で鹿を狩れるようになったら一人前」「米俵を一人で運べるようになったら大人」など、各地で成人の通過儀礼が存在していたようです。

江戸時代に入る頃には、元服も庶民社会で広がり、女性も「元服」と称するようになります。

③江戸時代、結婚した女性が、眉をそり、お歯黒をし、髪型を丸髷まるまげにかえることをいう。

お歯黒だけをつけるのを半元服、眉までそるのを本元服というが、本元服は、懐妊または分娩の後に行なうのをふつうとする。

出典 : 元服|コトバンク

以上が、かつての日本の成人式である元服や裳着です。

それでは、いつから20歳が成人と決められるようになったのでしょうか。

成人の年齢が20歳と定められるようになったのは、明治以降、明治9年の太政官布告(140年ぶりに成人年齢が見直しされ、18歳に引き下げられます)のことです。

このとき、なぜ20歳で大人とされたのか、その理由は定かではありません。

平均寿命や成熟度などを考慮し、20歳と定められたのではないか、という法務省幹部の声もあります。

日本で初めて成人年齢を20歳と定めたのは明治9年の太政官布告だった。江戸時代は地域によってばらつきがあったという。29年制定の民法でも、「成人は20歳」としている。

なぜ、20歳を成人としたのか定かではない。法務省幹部は「当時の日本人の平均寿命や精神的な成熟度などを考慮したのではないか」と説明する。

出典 : 「20歳」明記は明治9年|産経新聞

現在のような成人式の起源は、戦後まもなく、1946年に埼玉県の現蕨市で開催された「青年祭」のプログラムである「成年式」だと考えられています。

この青年祭に影響を受けた日本政府が、1949年の1月15日を「成人の日」と指定し、全国に広がり、今の成人式に繋がっていきます。

成人の日が1月15日と定められたのは、元服の儀が、旧暦で新年最初の満月の日である小正月に行われたことに由来しています。