言葉の意味・由来

「こないだ」とは

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「こないだ」とは

「こないだ」の意味

日常会話のなかで、「こないだ映画を見に行ってさ」といったように、「こないだ」が使われることがあります。

この「こないだ」という表現ですが、喋っているときには、「こないだ」と言っても違和感がありませんが、文章で「こないだ」と表記すると、一瞬、「あれ、これって間違いだっけ」と違和感を抱くかもしれません。

文章のなかで使う「こないだ」は、ちょっとおかしいような、たとえば若者言葉や言葉遣いとして間違っていると感じる人もいるかもしれません。

しかし、「こないだ」は、文章において使っても決して間違いではなく、普通に、「先日のこと」という意味の正しい表記になります。

漢字で書くと、「此間こないだ」で、もともとの由来となっている言葉は、「このあいだ」です。「このあいだ」も、漢字では、同じく「此間」になります(一般的には、「この間」と表記されることが多いでしょう)。

この「このあいだ」の音が縮まり、「こないだ」となります。そのため、使い方自体は特に間違いでもなく、あくまで「こないだ」も正しい表記として扱われています。

辞書でも、「こないだ」に関し、次のような説明がなされています。

こないだ こなひだ【此間】

〘名〙 (「このあいだ」の変化した語)
① ちかごろ。このごろ。最近。
② 先日。過日。せんだって。さきごろ。

出典 : 精選版 日本国語大辞典

一体いつから、「こないだ」という言い方が使われるようになったのでしょうか。なんとなく、最近使われるようになった表記と思うかもしれません。

でも、「こないだ」という表記自体は、結構昔からあったようで、古い小説のなかでも登場します。

たとえば、夏目漱石の『吾輩は猫である』にも、「こないだ」という言葉は幾度も登場します。

机の前には薄っぺらなメリンスの座布団ざぶとんがあって、煙草たばこの火で焼けた穴が三つほどかたまってる。中から見える綿は薄黒い。この座布団の上にうしろ向きにかしこまっているのが主人である。鼠色によごれた兵児帯へこおびをこま結びにむすんだ左右がだらりと足の裏へ垂れかかっている。この帯へじゃれ付いて、いきなり頭を張られたのはこないだの事である。滅多めったに寄り付くべき帯ではない。

出典 : 夏目漱石『吾輩は猫である』

こないだ保険会社の人が来て、是非御這入おはいんなさいって、勧めているんでしょう、――いろいろわけを言って、こう云う利益があるの、ああ云う利益があるのって、何でも一時間も話をしたんですが、どうしても這入らないの。うちだって貯蓄はなし、こうして小供は三人もあるし、せめて保険へでも這入ってくれるとよっぽど心丈夫なんですけれども、そんな事は少しも構わないんですもの」

出典 : 夏目漱石『吾輩は猫である』

また、辞書の用例を見ても、“玉塵抄(1563)一八「ちかうこないた作たをば新題と云ぞ」”、“洒落本・まわし枕(1789)「わっちゃあこねへだ丁からくらげへをしてきいしたから」”など、近代以前の昔から、音が縮まった形として使われていたようです。

ただ、たとえ文章表記で「こないだ」は間違いではないにしても、喋り言葉の印象が強いので、ビジネスのようなフォーマルな場所や、しっかりした文章を書く際は、避けたほうがよいかもしれません。

もし「こないだ」を書き換えるなら、「この間」や「先頃」「先日」「先達せんだって」などが類語として挙げられます。

敬語や丁寧語が必要な場面では、「こないだ」ではなく、「先日」などが無難だと思います。

ちなみに、「こないだ」で検索すると、「関西弁ではないか」「どこかの地域の方言ではないか」といった声も多く、確かに、方言だという説明も見受けられます。

もともとが方言で、話し言葉として全国に浸透していったのか、この辺りの詳しい事情は分かりません。ただ、辞書でも普通に「こないだ」が「“この間”の音が変化した語」として記載されているということは、少なくとも、全国的に使われているということなのでしょう。

ただ、「こないだ」自体が方言かどうかは別にして、訛りがあって「こねえだ」と言ったり、あるいは、発音のアクセントを置く位置が変わるなど、地域によってイントネーションに違いはあります。

北海道では、「こないだ」(↓↑↓↓)というイントネーションで、本州では、主に「こないだ」(↓↑↑↑)となるようです。

ただ、福井の方言に関する動画で、「こないだ」のイントネーションが分かる映像があり、こちらも訛りが見られるので、同じ本州でも地域によって差があるのでしょう。

動画 : 【福井弁かわいい】こないだぁ(イントネーション)

個人的には、「こないだ」(↓↑↑↑)というイントネーションで使っています。