小野小町〜秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを〜意味と解釈
〈原文〉
秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを
〈現代語訳〉
秋の夜は長いと言うが、名ばかりだった。愛しいあなたに逢ったら、あっけなく、あっという間に明けてしまうのだから。
概要
小野小町は、平安時代前期の歌人で、小野篁の孫と考えられています。謎も多く、女官として宮廷に仕えていたという話もありますが、生没年や本名含め、詳細は不明で、墓地も全国各地に存在します。
当時の素顔の絵などは残っていませんが、伝説などから絶世の美女として知られ、和歌も素晴らしく、多くの男性に愛されたと言われています。
恋の歌を『古今和歌集』などに残し、当時の代表的な歌人である六歌仙、三十六歌仙の一人でもあります。
上村松園『小野小町図』 1935年
この「秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを」という和歌は、『古今和歌集』に収録される恋の歌です。
秋の夜と言えば、「秋の夜長」という言葉もあるように、夜が長い季節。しかし、その秋の夜も、「名のみ」、すなわち、名ばかりのものだった、愛しいあのお方に逢うとなったら、ことぞともなく(あっけなく)明けてしまうのだから、と小野小町は歌います。
この「ことぞともなし」とは、「特にこれということもない。 何ということもない。 たいしたこともない。 あっけない。」という意味です。
そのため、「秋の夜も名のみなりけり逢ふといへばことぞともなく明けぬるものを」とは、現代語訳すれば、「秋は長い夜のはずなのに、名ばかりでした。あなたと逢っているときは、あっという間に終わってしまうのですから。」となる恋心の歌です。
幸福とも切なさとも解釈できる和歌なのではないでしょうか。