不登校と引きこもりとニートの意味の違いとは
社会問題の一つとして、よく取り上げられる言葉に、「不登校」や「引きこもり」、「ニート」の問題があります。
この三つの言葉は、それぞれ重なっている面もある一方で、意味合いにはっきりとした違いもあります。
不登校 : 学校に行けないこと。
引きこもり : 社会的な参加がないこと。
ニート : 職場や学校など、所属がない若者。
以下、不登校と引きこもりとニートの定義を参考にしながら、その違いについて解説したいと思います。
不登校
まず、不登校とは、読んで字のごとく、「学校に行けないこと」を意味します。
文部科学省は、不登校の定義について、次のように記載しています。
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの。
心理的、情緒的、身体的、または社会的な理由などによって、学校に行けない、行きたくても行けない状況にあり、年間30日以上欠席した者を、不登校と定義しています(ただし、そのうち、病気や経済的な理由によるものを除きます)。
不登校の子どもたちの人数は、少しずつ増加傾向にあり、現在は小学生、中学生で、約20万人ほどだと言われています。
不登校の原因は、たとえばいじめのように、大きな要因として特定の問題が挙げられる場合もあれば、様々な要因が複雑に絡み合って、「学校に行けない」という状況に追い込まれることもあります。
また、原因によっては、学校そのものに拒絶反応を示すものの、外に出たり、他のコミュニティなどで過ごすことについては、それほど抵抗がない、という場合もあります。
その際には、無理やり学校にこだわる必要はなく、自分の過ごしやすい環境で学んだり、休んだりすることも大切でしょう。
引きこもり
次に、「引きこもり」ですが、引きこもりについては、厚労省が、以下のように定義しています。
様々な要因の結果として、社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態。
出典:平成25年5月 厚生労働省「ひきこもり関連施策」
様々な要因によって、社会的参加を回避し、6ヶ月以上にわたって家庭にとどまり続けている状態を、「引きこもり」としています。
先ほども触れたように、不登校の場合は、あくまで学校というコミュニティに対する拒絶反応、あるいは不参加ということですが、引きこもりの場合は、学校以外のコミュニティや繋がりを含め、社会的参加ができず、原則6ヶ月以上、家庭にとどまっている状態を指します。
定義で言えば、近所のコンビニに行くことだけ、あるいは、趣味に関する用事として外に出る(準ひきこもり)ということも含め、“ひきこもり”に定義されることもあります
もし不登校であっても、他のコミュニティでリラックスできたり、趣味などを通して友人との繋がりがあるのであれば、それほど問題では無いかもしれません。
一方で、引きこもりとなると、心配の度合いも大きくなるでしょう。
引きこもりは、不登校同様に、原因は様々にあり、対人関係によるトラブルやトラウマもあれば、自律神経失調症のように、体調面の影響から不安感や無気力、恐怖心に繋がっている場合もあり、体と心と、色々な複合的要因によって、物理的に閉ざす、引きこもり状態になる、ということが言えるでしょう。
引きこもりという言葉は、現在では、英語でも、「HIKIKOMORI」とローマ字でそのまま使われ、東アジアを中心に海外でも言われるほどに浸透しています。
海外でも日本語の発音のまま「HIKIKOMORI」として紹介されているが、日本特有の問題というわけではなく、最近では他国でも対策や支援の必要性が叫ばれ始めている。
また、不登校は学生の問題ですが、引きこもりは、全世代に渡って当てはまる問題という点で違いが挙げられるでしょう。
国内の引きこもりの人数は、100万人にも上ると言われ、また、若者の問題だけでなく、中高年も多いことから、問題の深刻さが伺われます。
中高年の引きこもりは、推計で60万人以上いるという調査結果が出ています。
内閣府は29日、自宅に半年以上閉じこもっている「ひきこもり」の40~64歳が、全国で推計61万3千人いるとの調査結果を発表した。7割以上が男性で、ひきこもりの期間は7年以上が半数を占めた。15~39歳の推計54万1千人を上回り、ひきこもりの高齢化、長期化が鮮明になった。
若者世代よりも中高年のほうが多く、引きこもりの高齢化、長期化も深刻化しています(参照 : 「8050問題」とは? 求められる多様な支援)。
ニート
ニートとは、イギリスが発祥の言葉で、「Not in Education,Employment or Training」の頭文字を取った造語のことです。
日本におけるニートについて、内閣府は、次のように定義しています。
15歳以上 34歳以下で,どの学校にも通学しておらず,ふだん収入を伴う仕事をしていない独身の若年無業者 (内閣府)。
一体、ニートとはいつから言われるようになったのでしょうか。
もともと起源はイギリスで、1999年頃から、学校にも、雇用にも、職業訓練にも従事せず、社会から隔絶された若者への取り組みが始まるなど、若者対策のなかでニートという言葉が使われ、日本でも2004年頃から広まっていきます。
ニートの人数は、現在約80万人ほどと言われています。
ニートのほうが、より「職場」や「学校」など、所属という点に絞られた概念と言えるでしょう。
ニートでも、元気に遊んで幸せに暮らしている人もいれば、引きこもりゆえにニートでもあるという人も、もちろんいます。
ニート全体の半数近い、49.5%がひきこもり状態であるという調査もあります。
まとめ
最後に、簡単にまとめると、①「不登校」とは、学校という部分に焦点を絞った概念で、「学校に行けない」ことを意味します。
②「引きこもり」とは、「社会」に絞り、社会参加が難しく、家庭にとどまって生活することが長期間続くことを指します。
③「ニート」とは、仕事や学習などの面で活動していない若者のことを言います。
不登校にしても、引きこもりにしても、ニートにしても、ただ一つの原因や対策を考えるのは難しく、社会的な制度の問題、学校や家庭環境の問題、日々の生活習慣など体の問題、過去のトラウマなど精神面の問題など、様々な階層の問題が複雑に絡み合って、問題が生じていると言えるでしょう。
以上、不登校、引きこもり、ニートの定義や意味、それぞれの違いなどでした。
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