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アニメ

オッドタクシーと幸せのボールペンの考察

オッドタクシーと幸せのボールペンの考察

2021年に話題になったアニメに、テレ東の『オッドタクシー』という作品があります。

この『オッドタクシー』は、一話が約30分で、全部で13回となっています。

ざっくりしたあらすじを書くと、主人公で個人タクシー運転手の小戸川と、その乗客や友人たちとの交流のなかで、一つの事件が展開していく、エンターテインメントに謎解きサスペンスの要素も入ったアニメです。

個人タクシー運転手・小戸川は、身寄りがなく他人とも関わりたがらず、少し偏屈で無口な変わり者。自他ともに認める天涯孤独の身である小戸川は平凡な生活を送るため、彼の運ぶ客や数少ない友人との会話に応じることでコミュニケーションと自我を保っていた。

何気ない人々の会話が繰り広げられる中で、やがて失踪中の一人の少女が関わった事件に繋がっていく。

出典 : オッドタクシー|Wikipedia

登場人物はみんな擬人化され、様々な動物として描かれています。

作中、色々な伏線があり、細かなやりとりや設定も面白く、すっと世界に引き込まれるので、あっという間に全話を観ることができるでしょう。

動画 : TVアニメ「オッドタクシー」PV第3弾

以下、ネタバレありで、「幸せのボールペン」を軸に、『オッドタクシー』のラストの意味に関する考察を紹介したいと思います。

伏線回収の一つの鍵として、『オッドタクシー』の公式YouTubeチャンネルでは、この「幸せのボールペン」に関するオーディオドラマが公開されています。

#オッドタクシー​】オーディオドラマ第1.3話「幸せのボールペン」

幸せのボールペンとは、居酒屋「やまびこ」のタエ子が、小戸川の本音を聞きたかったことと事件物のノンフィクションを書きたかったという動機から仕掛けた「ペン型盗聴器」です。

ただ、オーディオドラマの最後に、電話でボールペンのことを小戸川に伝えているので、隠し通したかったわけでもないようです。

本編を、よく探すと、この幸せのボールペンが、ときどき登場しています。

このボールペンは、てっぺんが赤いハートの形であり、肌身離さず持ち、他人に渡すと幸せになれる、という触れ込みで、次々に人の手に渡っていきます。

幸せのボールペンが最初に登場するのは、第1話の居酒屋「やまびこ」のタエ子の後ろの戸棚です。

その後、この盗聴型ボールペンは、剛力から小戸川に渡り、山本、市村、二階堂と、どんどん持ち主を変えながら色々なキャラクターたちの裏の声を拾っていきます。

画像 : オッドタクシー 特別編 幸せのボールペンを探せ!

オーディオドラマでは、ボールペンによって盗聴した内容を、お笑いコンビのホモサピエンスのファンであり、キリン姿の長嶋聡が傍受し、配信する(タエ子は傍受することができなかった)という内容になっています。

オーディオドラマを聞くと、『オッドタクシー』のラストは、しっかり結末として完成していることが、いっそうよく分かります。

オーディオドラマ内では、ラストで、幸せのボールペンがタエ子の元に戻ってきたあと、タエ子は襲われ、次に、渋谷駅新南口の自動販売機の下からペンを持ち帰った長嶋聡も、ターゲット(殺害予告?)にされます。

「次はお前だよ、これ聞いてるやつ。渋谷駅新南口でボールペン持っていった、お前だよ。」

なぜ、犯人は、このボールペンの存在がわかったのでしょうか。

オーディオドラマ内の記録された音声によれば、長嶋の一つ前にボールペンを手にした和田垣さくら(真犯人で、三矢ユキに扮していた)は、母から、盗聴された内容がネットで配信されている、という報告を受けています。

動画 : 【オッドタクシー​​​​​】オーディオドラマ第11.10話「The cat is out of the bag.」

この回のタイトル「The cat is out of the bag」とは、「秘密が漏れた」ということを意味する言葉です。

この言葉は、猫を袋に入れて「豚だ」と言って売ろうとしたら、猫がとび出てきた、という故事に由来します。

このタイミングで、和田垣さくらは盗聴の存在に気づき、その盗聴内容に、自分が三矢ユキを殺した真犯人である、という秘密が示唆されていることから、その内容を聞いたのは誰かを突き止め、口封じに殺そうと考え、幸せのボールペンにGPSを仕掛けたのではないでしょうか。

そのペンを、和田垣さくらは、わざと渋谷駅新南口の自動販売機の下に置いたのでしょう。

長嶋は、盗聴器から聞こえる周りの音をヒントに、この場所を突き止めた、と言い、ボールペンを拾ったあと、「やまびこ」で開かれた小戸川の快気祝いの席で、タエ子のもとにボールペンを返しに行きます。

長嶋が、タエ子がこのボールペンの持ち主だと知っていた理由は、最初に剛力が、「タエ子ママからもらった」と語っていることからわかったと、オーディオドラマの最終話で告白しています。

オーディオドラマの最終話のラストでは、和田垣さくらと思しき女性が、みんなが帰ったあとの店を訪れ、タエ子が襲われる様子が音声から伝わってきます(長嶋はその音声を生配信していた)。

そして、アニメ版の最終話(時系列的には、このオーディオドラマの最終話で描かれる年末の快気祝いがあった日の「その後」)のラストシーン。

最後、小戸川のタクシーに、タエ子が持っていたはずの幸せのボールペンを握りしめた和田垣さくらが乗り込み、にっこりと笑ってラストを迎えます。

実際、その直前、さくらが歩きながら母に電話をかけているシーンで、三矢ユキを絞め殺す映像が流れ、「あとは、あのとき乗ったタクシー運転手が見つかればと思っていたけど、私、わかったかもしれん」という話をしているので、彼女は小戸川も狙っていたのでしょう。

アニメ版のラストシーンのときには、タエ子だけでなく、すでに長嶋も殺された可能性は高いでしょう。

一瞬流れるホモサピエンスの野外ライブ会場に、長嶋の姿はありませんでした。

もしかしたら、最後に小戸川も殺される可能性が……という不気味な含みを持たせながら、作品はエンディングを迎えます。

一度全話を観終わったときは、若干続編もありそうな感覚も匂わせますが、『オッドタクシー』は、和田垣さくらをもう一人の裏主人公に据えた、サイコホラーサスペンスとして、しっかり完結していると言えるでしょう。

以上、『オッドタクシー』の幸せのボールペンとラストに関する考察でした。