市役所への封筒には御中
市役所や県庁、町役場など、いわゆる役所に封筒で書類を送る場合があると思います。
役所に封筒を送る際に悩むことの一つが、宛名の敬称ではないでしょうか。
一般的に、手紙を送る場合、宛名の最後に「様」をつけます。
縦書きの封筒では、右側に住所を書き、真ん中に宛名を書き、最後に様をつける。
一方で、市役所などの役所に送る場合は、基本的には「様」ではなく「御中」という敬称を使います。
以下、宛名に使用する敬称の御中について解説したいと思います。
宛名の敬称としてよく使われるものは、今挙げたように「様」と「御中」があります。
様と御中の違いは、宛先が、個人か、団体か、と言えるでしょう。
様というのは、普段接客などの際に名前に「〇〇様」とつけるように、個人が宛名の場合に使います。
御中とは、宛名が組織や団体などの場合に使う敬称(脇付)で、その団体の「中」の誰か、という意味合いになります。
由来というのははっきりわかっていませんが、明治以前に、脇付(手紙で、あて名の左下に書き添えて敬意を表わす語)として用いられていた、人々御中の省略形と考えられています。
明治期以前、脇付に用いられていた「人々御中(ひとびとおんなか)」の「人々」の省略形「御中(おんなか)」を音読したものか。明治後期から大正期にかけて、音読した形で脇付語として定着したと考えられる。
そのため、組織や団体に送るとしても、「その中の特定の誰か」というのが宛名として明確にある場合は、「御中」ではなく「様」を使います。
また、特定の担当者がいる場合も、「担当者様」といった記載になります。
繰り返しになりますが、「御中」とは、組織や団体などに送り、特定の宛先がなく、その中の誰かへ、というニュアンスのときに使われる言葉です。
市役所や県庁への封筒も、企業などと同様、組織や団体であり、その中の誰かが受け取ってくれればいい、ということから、宛名の敬称は「御中」になります。
御中の位置は、個人の宛名の際に「様」をつける場所と同じです。
◯◯市役所 御中
○○市役所 △△課 ××係 御中
先ほども言ったように、もし担当者に送ってほしいというような要望であれば、「担当者様」とするのが良いでしょう(参考 : 「採用ご担当者様」の正しい使い方)。
様と御中は、両方同時には使わないので、併用はしないように注意しましょう。
また、返信用の封筒が入っていた場合、その返信用の封筒の宛名の敬称部分には、「行」や「宛」が書いてあると思います。
これは、自分自身で自分に敬称を使うのがマナー違反であるということから、あえてそう書いてあり、送り返す場合も、この部分を「修正」することがマナーとされています。
その際、修正液や修正テープなどで消したら失礼に当たるので、これも一つのマナーとして、「二重線」で消し、縦書き封筒の場合は、下か左側に、横書き封筒の場合は右側に、「御中」と書きましょう。
画像 : ビジネスマナーとしての返信時の行・宛の消し方と御中・様の書き方
二重線による消し方は、縦書き封筒の場合、右から左斜め下への二重線、横書き封筒の場合は横の二重線にします。
二重線は、定規できっちりする必要はなく、フリーハンドで構いません。
ちなみに、御中は英語でどういう表現になるのでしょうか。
そもそも、個人主義の強い英米には、組織や団体に敬称をつける習慣自体ないようです(参照 : 御中を英語ではどう書いて外国の会社宛に手紙をだせばいいのか?)。
そのため、敬称はなく、以下の通りで十分とのこと。
For the attention of: 部署名
Attention (Attn): 部署名
その他、「Dear」も使用され、個人も団体も、ほとんど全て「Dear」を使うようです。
以上、市役所などへ送る封筒の宛名の敬称「御中」に関する解説でした。