「おざなり」と「なおざり」の違いや覚え方
「おざなり」と「なおざり」の違いとは
普段、「おざなり」という言葉と、「なおざり」という言葉では、どちらを使ったり、耳にする機会が多いでしょうか。
個人的には、「おざなり」のほうが多い印象なのですが、音も似ていることから、おざなりとなおざりは、ほとんど同じような意味合いとして捉えている人もいるかもしれません。
あるいは、あれ、おざなりとなおざりは、どちらが正しいんだっけ、と一瞬悩むこともあるかもしれません。
両者は、別にどちらかが間違いというわけではなく、両方とも言葉として存在します。
ただし、おざなりとなおざりは、その意味に関して、「いい加減」という点では似ているものの、ある面においては、「はっきりとした違い」もあります。
それでは、どういった点に違いがあるのでしょうか。
まず、おざなりとは、「その場限りの間に合せ、いい加減」という意味ですが、「いい加減ではあるものの、なにかしらの対応をする」というニュアンスになります。
一方、なおざりとは、「いい加減で、なんの対応もせずに放置する」ということを指します。
おざなりにしている、というのは、たとえ手抜きであっても、「何かしらをやっている」のに対し、なおざりは、「ほとんど何もやらずに放置している」という点に大きな違いが見られる、というわけです。
以下、具体的な例文から、使い方を見ていきましょう。
①頼まれたことを「おざなり」にして、男は家を出た。
この場合、頼まれていたことを、手を抜いて適当に済ませてから、家を出たことが伺えます。
②頼まれたことを「なおざり」にして、男は家を出た。
こちらの場合は、頼まれたことについて手をつけずに、放置したまま、家を出た、といった意味合いになります。
また、別の例文としては、「①宿題の読書感想文をおざなりにする」と、「②宿題の読書感想文をなおざりにする」でも、違いが分かりやすいのではないでしょうか。
①おざなりは、手を抜いて、適当に読書感想文を書いています。
②なおざりは、読書感想文自体に手をつけず、放置したままにしています。
こんな風に、一見似ている二つの言葉ですが、意味には違いがあります。
語源と覚え方
一般的には、ひらがなで表されることの多い、おざなりとなおざりですが、漢字では、どういった表記になるのでしょうか。
おざなりは、漢字だと「御座形」と書きます。
これは、「御座(敷)の形」に由来し、お座敷(宴会の席)における、その場しのぎの適当さや、表面的な形を取り繕ったような言動を指したものと言われています。
おざなりという表現が使われるようになったのは、江戸時代の頃からのようです。
江戸時代の川柳にも、「お座なりに芸子調子を合はせてる」という句があります。
これは、芸者が、御座敷のランクなどに合わせ、手を抜いた対応をする、要は客によって扱いを変えている様を表現し、このことから派生し、おざなりが、「いい加減な対応」を意味するようになります。
一方、なおざりは、漢字で書くと、等閑(「とうかん」と呼んでもほとんど同じ意味になります)です。
なおざりに関しては、だいぶ古く、平安時代には使われていたようで、よく言われる由来の説として、「直・去り」が語源になっていると考えられています。
この「直」とは、「何もせずにそのまま」という意味で、「去り」というのは、「遠ざける」ということを指します。
この二つから、なおざりは、何にもしないで放置する、という意味合いになったと言われています。
それぞれの語源について見てみましょう。
「おざなり」は、「御座(敷)の形<なり>」を縮めたものです。このことばは19世紀初めには使われ始めていますが、宴会の席(御座敷)などで表面的に形ばかりを取り繕った言動のことを指したものと推測されます。
いっぽう「なおざり」はもう少し歴史の古いことばで、10世紀には使用例が見られます。このことばの語源にはいくつか説があるのですが、その1つに「なほ(直・猶)+さり(去)」というものがあります。「なほ」は「そのまま何もせずにいること」、「去り」は「遠ざける」という意味がありますから、ここから想像すると「なおざり」は「何もしないで距離を置いておく(放っておく)」というのが出発点だった、と言えるかもしれません。
ちなみに、「とうかん」という読み方の場合、「等閑に付す」という言い回しがあり、「物事をいいかげんに放っておく」という意味になります。
さて、おざなりとなおざりは、ややこしく、覚え方というと難しいかもしれませんが、今、解説したような語源や由来で覚えておくと、多少分かりやすいかもしれません。
おざなりは、お座敷の形に由来し、宴の席で適当に対応することから、おざなり。(いい加減でも、一応はする)。
なおざりは、何もしないで「去る」ことから、なおざり(いい加減で、なにもしない)。
また、類語としては、「ないがしろ」や「おろそか」なども挙げられます。
こちらの言葉のほうが、人間関係や仕事の場などでもよく耳にすることがあるかもしれません。「ないがしろ」とは、「人や物事が、あってもまるでないかのように扱われること」を指し、「おろそか」は、「いい加減なこと」を意味します。
以上、おざなりとなおざりの意味の違いや語源、覚え方でした。