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日本古典文学

竹取物語の冒頭

竹取物語の冒頭

〈原文〉

今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。 野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。 名をば、さぬきのみやつことなむいひける。 その竹の中に、もと光る竹なむ一すぢありける。

〈現代語訳〉

今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。野山に分け入っては竹を取り、様々なことに使っていたそうである。名を、さぬきの造と言った。その竹のなかに、根元が光っている竹が一本あった。

概要と解説

竹取物語 絵巻

平安時代初期に成立した『竹取物語』は、仮名文による日本で最初の物語文学で、古くは『かぐや姫の物語』『竹取翁物語』などとも呼ばれています。

竹取物語の作者や正確な成立年は不明ですが、成立年の説としては、9世紀後半説と、10世紀中頃説とあり、民間に伝わっている「竹娘説話」や「羽衣説話」が骨子となったようです。

竹取物語は、今から1000年以上も昔、平安時代の頃に書かれた物語で、子供の頃に昔話や絵本などで親しむ「かぐや姫」のもとになっている話です。

竹取の翁が、竹のなかで見つけたかぐや姫を育て、やがて大きくなると、かぐや姫は5人の貴公子の求婚を受けます。

しかし、姫は彼らの求婚を頑として断り、帝の召命にも応じることなく、8月の十五夜の日に月の世界へ帰っていく、というのが、竹取物語のあらすじです。

冒頭は、おじいさんである竹取の翁に関する説明と、その翁が、竹のなかに光る一本の竹を見つけ、かぐや姫と出会うシーンから始まります。

〈原文〉

今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。 野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。 名をば、さぬきの造みやつことなむいひける。 その竹の中に、もと光る竹なむ一すぢありける。

あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。

〈現代語訳〉

今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。野山に分け入っては竹を取り、様々なことに使っていたそうである。名を、さぬきの造と言った。その竹のなかに、根元が光っている竹が一本あった。

不思議に思って、近寄ってみると、竹筒のなかが光っている。そのなかを見ると、三寸ぐらいの人が、とてもかわいらしい様子で座っていた。

出典 :『竹取物語』

この竹取の翁の名前として書かれている、「讃岐造さぬきのみやつこ」のみやつことは、宮廷に仕えた、今で言う公務員のような意味や、その土地の長のような意味合いで解説される場合もあります。

おじいさんの本名「讃岐造」の「讃岐」はもとは神事を司っていました。「造」は「宮つ子」という宮廷に仕える家来のことで、おじいさんは朝廷から竹林の管理を任されている人だったのでしょう。身分は低く、貧しくとも、出自はしっかりした人だった事が分かります。

出典 : 私の好きなかぐや姫 ~竹取物語の世界~ 

まず、『竹取物語』に書かれた「おじいさん」の名前ですが、『竹取物語』の冒頭に「今は昔、竹取の翁というものありけり。名をばさぬきの造となむいひける」とあります。つまり竹取翁の名前は「讃岐造(さぬきのみやつこ)」と書かれていますことから、『竹取物語』のおじいさんは讃岐村の長であることがわかります。

出典 : かぐや姫情報 云われ

教科書にも載っている竹取物語、今はどうなっているかわかりませんが、中学や高校の授業で、この冒頭の原文を音読したこともあるかもしれません。

竹取物語の全文を現代語訳で知りたい場合には、田辺聖子訳や川端康成訳もあり、決して長くはないので、一度現代語訳を読んでみてはいかがでしょうか。

特に八月の満月の夜に、天人が迎えに現れ、かぐや姫が月に帰っていかなければいけない別れのシーンは、今読んでも感動する切ない物語として描かれています。

また、ジブリの高畑勲監督の遺作として知られる『かぐや姫の物語』も、竹取物語が原作なので、アニメで知るというのもよいでしょう。

高畑勲『かぐや姫の物語(スタジオジブリ)』 予告編

美しい映像で、竹取物語の繊細さをこぼすことなく描き、最後の迎えのシーンも、アニメ史に残る素晴らしい名場面となっています。

ちなみに、竹取物語の英語版のタイトルは、『The Tale of the Bamboo Cutter』、または、ジブリの作品『かぐや姫の物語』の英語版でもある、『The Tale of Princess Kaguya』が知られているようです。

以上、竹取物語の冒頭でした。