日本文化

ちょっと怖い、指切りげんまんの意味と由来

ちょっと怖い、指切りげんまんの意味と由来

子供の頃によく、友達などと約束をする際、小指同士を絡めて「指切りげんまん」をした人も多いのではないでしょうか。

指切りとは、近世以降の日本の風習で、誓約の証としてフック状に折り曲げた小指をお互いに絡め、「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます、指切った」と歌のようにして唱える行為を指します。

全体としては、もし嘘をついたら罰を与える、という意味ですが、前半にある「げんまん」とはどういった意味なのでしょうか。

げんまんとは、漢字で書くと「拳万」と表記し、げんまん単独で指切りそのものを意味するとともに、約束を破ったら「ゲンコツで一万回打つ」ということも指します。

後半の「針千本」は、尖った針を千本、という意味かと思いきや、魚のハリセンボンではないかという意見もあり、この辺りははっきりしません。

ただ、図書館のレファレンス事例によれば、〈『江戸時代子ども遊び大事典』より、“針千本はとげで体がおおわれたふぐ”。〉とあり、魚のほうのハリセンボンであることが紹介されています。

「ゆびきりげんまん」の意味
いずれの参考資料も、約束を破らないことを誓い、破った場合は罰があることを示している。
破った場合の罰としてに関しては、以下の通り。
資料(1)より、“子どもたちの間での約束の指切りは「針千本飲ます」などというように、約束を破ったとき、相手に罰として非常な苦痛を与える”。
資料(2)より、“「げんまん」は「拳万」と書き、約束を破ったときには、拳固(握りこぶし)で一万回打つ制裁の意味を込めたもの”。
『江戸時代子ども遊び大事典』より、“針千本はとげで体がおおわれたふぐ”。

出典 :「ゆびきりげんまん」の歌の由来と意味を知りたい。

指切りの際に唱える言葉には、方言のように地域で違いも見られ、「指切り、かまきり、嘘いうものは、地獄の釜へぽったりしょ」(東京都)、「いびきり、いびきり、三年過ぎたら、乳から下へくされよ」(愛知県)などがあります。

その他、指切りげんまんの地方での呼び名もキンカやカギヒキなど様々あるようです。

それでは、そもそも一体なぜ「指切り」は「指を切る」と書くのでしょうか。

この「指切り」の由来については、ちょっと怖い江戸時代の風習が起源として存在します。

まず、江戸時代に、遊郭ゆうかくの女性たちのあいだで、愛の誓いの印として、「心中立しんじゅうだて」と呼ばれる愛の証明が行われるようになります。

心中立てとは、吉原を初めとする遊郭で働く遊女が、意中の男性客に対し、自分の愛(心の中)が本物であることを証明するために、自分の髪の毛を切って渡したり血判書を渡すことを意味します。

この心中立てが、徐々にエスカレートし、血判書や髪の毛ではなく、自分の二の腕や太ももを刺したり、爪を剥いだり、小指を切って渡すようになります。

小指を切るという心中立ての方法が、遊女のあいだで実際にどれほど浸透していたかは定かではありませんが、吉原には小指を切る道具一式を売っていた店もあったそうなので、めったにないということもなかったかもしれません(模造品や首斬り役人から死体の指を調達するなど「偽物」を渡す遊女もいたそうです)。

この愛の誓いである心中立ての一つの指を切る行為に由来し、約束事をするときの「指切り」の風習が生まれます(謝罪や忠誠を意味する指詰めも、この遊女の風習に由来すると考えられています)。

「ゆびきりげんまん」の由来
江戸時代に遊里の男女が交わした誓いに由来する。
(1)『日本民俗大辞典 下』p.765「ゆびきり(指切り)」の項には、“約束としての指切りは江戸時代、遊里において男女がお互いの愛情を確かめるために指を切ったことに由来するといわれる”と解説されている。
(2)『暮らしのことば新語源辞典』のp.895「指切りげんまん」の項でも資料(1)と同様に、“遊女が客に誓約する証として小指を切断する意があった。それが転じて、約束を必ず守るしるしに互いの指を引っ掛けるようになったと考えられる”と記述されている。

出典 :「ゆびきりげんまん」の歌の由来と意味を知りたい。

また、この心中立てが、さらに進み、その究極の形として共に死を選ぶ「心中」に繋がり、江戸時代以降、日本では心中が文化の一つのように浸透していきます。

子供の頃から誰もが何気なく行っていた「指切りげんまん」には、こうした文化的背景があったのでした。

ちなみに、海外にも指切りの風習はあるのでしょうか。

日本の心中立てに由来する指切りですが、海外ドラマなどでも、約束の証として指切りをするシーンが登場することがあります。

ゆびきりドラマ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』

アメリカのドラマ『クレイジー・エックス・ガールフレンド』では、登場人物の女性従業員同士が指切りをします。

また、青春映画の代表作として知られる『スタンド・バイ・ミー』でも、小指を掲げ、英語で指切りを意味する言葉を言い合うシーンが出てきます。

指切りは、英語で「pinky swear」と言い、アメリカの子供たちの約束の際に行われるジェスチャーであり、古くは19世紀頃の辞書に載っていたそうです。

pinkyは「小指」、swearは「誓い」という意味で、「Pinky Promise」という表現もあります。

ただし、英語圏の場合、「指を切る」「拳万」「針千本飲ます」といった意味合いはなく、代わりに次のような文言が知られています。

Pinky, pinky swear, Whoever tells a lie will sink down to a bad place and never rise up again.

【日本語訳】小指に誓って、もし嘘ついたら、悪い場所に沈み込んで、もう二度と立ち上がることはできないよ。

この英語のpinky swear自体、日本の遊女の心中立てに由来する「指切り」の風習が発祥ではないかという指摘もあります(「Yubikiri」とローマ字表記で説明されています)。

どのようにして伝わったかの経緯は分かりませんが、起源はアメリカよりも日本のほうが古く、文化的な背景も鑑みると、その可能性は大いに考えられるでしょう。